幸福のアラビア イエメン
イエメンは、気候や習慣などが日本とは大きくことなります。国民のほぼ100%がイスラム教ということもあり、イメージしにくい部分も多いと思いますので、今回は、まずはじめにイエメン共和国の概略を簡単に説明します。昔から「幸福のアラビア」と呼ばれ、コーヒーのルーツとも言われている国「イエメン」について、皆様にも知っていただきたいと思います。
イエメン珈琲のランク分け取引エリア
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ランクA
- バニー・マタル
- バニー・イスマイル
- ハウラーン
- ハイマー
- サイヒ
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ランクB
- ヤーファ
- ハラス
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ランクC
- シャルク
- アーネス
- ブラ
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ランクD
- ライマー
- ハッジャ
- オダイン
※3位までのランキングはあまり変動しないが、3位以下の産地は年によって、ランクが変動する。
「イエメンという国は、どのような国なのか
- 【位置】
- アラビア半島の南端(サウジアラビアの南でオマーンの西)に位置し、首都はサナアです。
国土は、南北に およそ北緯17度30分から12度30分まで、東西に東経42度30分から53度30分までを 占めていて、南はインド洋に面し、西は紅海に面しています。 - 【気候】
- 亜熱帯気候で、一年に雨期が回あるが、紅海沿岸の平原や内陸砂漠部は海抜1000~2200mの山岳地帯で、 中東には珍しく年間降水量が1000~1500mmくらいあります。
- 【宗教】
- ほぼ100%イスラム教で、シーア派、スンニ派など、宗派は様々。
イスラム教はアルコールの飲用を禁じています。よってコーヒーの皮殻で作る「ギシル」とコーヒーの豆を焙煎して作る「ブン」の二つのコーヒーの飲用文化や、「カート」(アカネ科の植物の葉で錯覚作用がある)を噛む習慣が始まったと言われています。 - 【政治制度】
- 立憲、大統領で、憲法に基づき国民から選出された議会が立法権を持っています。
しかし、部族の掟が重視されています。 - 【生活・産業】
- 基本的には自給自足で国民の7割が農民です。しかし、生産性は低く農業生産額は国民総生産の3割を切っています。その中でもコーヒーは、唯一、外貨獲得に貢献する貴重な農産物です。
コーヒー以外の外貨獲得の手段としては、外国(主にサウジアラビア)に出稼ぎ労働するくらいしかなかったのですが、1984年にようやく発見された石油、天然ガスが今後の主力産業として期待されています。 - 【歴史】
- 紀元前にシバの女王で有名な「シバ王国」として栄えました。海のシルクロードやスパイスロードと呼ばれ、インドやアフリカと東地中海ヨーロッパを結ぶ重要な中継点でした。
コーヒーの飲用のルーツ、イエメン・モカ・マタリは「琥珀の女王」とも呼ばれますが、これは香味が秀逸で滑らかで、とても繊細で女性的なコーヒーということと、「シバの女王」を組み合わせた言葉なのでしょう。
写真上:山に囲まれた首都のサナア。国民のほぼ100%がイスラム教で占められるイエメン。日本とはまったく異なる町並みが広がっている。
「伝統的農業技術がイエメンコーヒーを支える
イエメンは、「緑のアラビア」と呼ばれるほど、中東アラブにあって、緑が豊かで雨にも恵まれている国です。その中でも、コーヒー栽培は貴重な外貨獲得商品として政府が推奨しています。
コーヒーノキは、内陸山岳部地帯の高度1000~2000mまでの年間降水量1000mm位の山岳地帯に植えられています。テラス(斜面)やワディ(枯れ川)沿いを活用し、幅広く栽培されています。農法は、1年に2回ある雨期による雨水による天水農法で、自然の雨水を最大限に活用した、昔からの伝統的農業生産技術によって行われています。険しい山岳地帯の山間の斜面でも、庭ほどの数十、数百段の段々畑を連ねて、雨水を効率よく使って生産されています。しかし、必ずしも雨量は毎年安定しているわけではなく、時には長い干ばつが起こることもあります。安定した収穫量を得るには、貯水所や地下水などの灌漑設備が必要ですが、実際にはほとんどの産地には設置されていないのが現状です。気温は、日中は一年を通してだいたい30度前後ですが、年格差よりも、昼夜の温度差の方が大きく、冬の夜間では2~3度くらいまで下がるところがあるほどです。
高地になればなるほど昼夜の温度差が激しく、霜はおりないが、霧がよく発生します。この霧の発生は、世界の優良なコーヒーの産地のほとんどが、そうであるように、また高原野菜がおいしいように、良い農産物を作り出す必須条件のひとつなのです。土壌は、イエメンの山岳地帯のほとんどが火山岩質で、ミネラルに富んでいて豊かな収穫を約束してくれます。
コーヒーノキは、内陸山岳部地帯の高度1000~2000mまでの年間降水量1000mm位の山岳地帯に植えられています。テラス(斜面)やワディ(枯れ川)沿いを活用し、幅広く栽培されています。農法は、1年に2回ある雨期による雨水による天水農法で、自然の雨水を最大限に活用した、昔からの伝統的農業生産技術によって行われています。険しい山岳地帯の山間の斜面でも、庭ほどの数十、数百段の段々畑を連ねて、雨水を効率よく使って生産されています。しかし、必ずしも雨量は毎年安定しているわけではなく、時には長い干ばつが起こることもあります。安定した収穫量を得るには、貯水所や地下水などの灌漑設備が必要ですが、実際にはほとんどの産地には設置されていないのが現状です。気温は、日中は一年を通してだいたい30度前後ですが、年格差よりも、昼夜の温度差の方が大きく、冬の夜間では2~3度くらいまで下がるところがあるほどです。
高地になればなるほど昼夜の温度差が激しく、霜はおりないが、霧がよく発生します。この霧の発生は、世界の優良なコーヒーの産地のほとんどが、そうであるように、また高原野菜がおいしいように、良い農産物を作り出す必須条件のひとつなのです。土壌は、イエメンの山岳地帯のほとんどが火山岩質で、ミネラルに富んでいて豊かな収穫を約束してくれます。
(写真上:良質なコーヒー豆が採れることで有名なバニー・マタル地方の栽培地。普及率はかなり低いが、万一の干ばつに備えて、貯水池からの灌漑設備を設置するところもある。)
しかし、土の状態と土壌を常に維持することは、作物の生産にとって重要な要因で、機械化が進んでいないイエメンでは、一年中人力によって根気よく手入れがなされています。肥料は、家畜の糞や川底の砂(ミネラルを多く含む)などの有機肥料が使われていて、化学肥料や農薬は使われていませんでした。
このように、イエメンでは良質なコーヒーを生産する条件が、ほとんど揃っていると言えます。しかし、一地域のコーヒー生産量は少なく限定されています。
その要因として、まず考えられるのが、多くの若者が外国(主にサウジアラビア)に出稼ぎに行ってしまうことです。そのため、労働力が低下し、なかなか生産性をあげることができません。また、産地が険しい山岳地帯にあり、絶対的な農耕面積が狭いのに加え、自給自足の生活が基本ゆえ、その土地で一番確実に収穫できる主食農業作物が優先されるからなのです。 しかし、最も大きな理由は、イエメン人には絶対に欠かせない「カート」の栽培地域が、コーヒーの栽培地域と共通することです。自分たちが消費する「カート」の栽培に力を入れるため、コーヒーの栽培面積が縮小することはあっても、拡大することがないからです。
このように、イエメンでは良質なコーヒーを生産する条件が、ほとんど揃っていると言えます。しかし、一地域のコーヒー生産量は少なく限定されています。
その要因として、まず考えられるのが、多くの若者が外国(主にサウジアラビア)に出稼ぎに行ってしまうことです。そのため、労働力が低下し、なかなか生産性をあげることができません。また、産地が険しい山岳地帯にあり、絶対的な農耕面積が狭いのに加え、自給自足の生活が基本ゆえ、その土地で一番確実に収穫できる主食農業作物が優先されるからなのです。 しかし、最も大きな理由は、イエメン人には絶対に欠かせない「カート」の栽培地域が、コーヒーの栽培地域と共通することです。自分たちが消費する「カート」の栽培に力を入れるため、コーヒーの栽培面積が縮小することはあっても、拡大することがないからです。
欠け豆に隠された秘密欠け豆に隠された秘密イエメンの国内で分けられる独自のランキング表では、“D”のハッジャ。何十段にも積み重ねられた段々畑は、山岳地帯のイエメンでは一般的に見られる景色だ。
「欠け豆が、イエメンコーヒーの良さの基準?
日本では、ワタル株式会社が「バニー・マタル」を1990年に輸入するまで、イエメン・コーヒーをほとんど「モカ・マタリ」と呼んで、豆の大きさ(?)によって、「999」、「777」などと、中南米のコーヒー豆と同じような規格をあてはめて、とても不思議な分け方をして取引していました。(今だにこの規格で取引している商社も多い。)
イエメン国内では、コーヒー豆の大きさによってランク分けすることはありません。イエメンのコーヒー商社、K社の説明によると、昔から独自の方法により、コーヒーを四つのランクに分けて取引しているそうです。(別表参照)
それでは、イエメンの評価ランキングは、何を基準にして決められるのでしょうか。それは、産地の標高、香り、形、色、味、その年の収穫の良否など、総合的に判断されるそうです。産地は、低産地(1000m前後)のコーヒー豆は評価が低く、高産地(2000m前後)になるほど評価は高くなります。豆の香りは、フルーティーな香りが強い物が良質とされています。形は、イエメンのコーヒー豆はアラビカ種の原種に近いので、豆の形は全般的に小粒です。特に高産地になればなるほど、丸みを帯びた小粒な豆になります。脂肪が豊かで、豆が柔らかいので、脱穀(注・石臼を使用)をする時に、豆がセンターカットに沿って割れ、欠け豆になりやすいのです。
そうです!私たちが必死になってハンドピックで取り除き、捨ててしまっていた、あの欠け豆は、実はイエメンの優良コーヒーを示す「証明書」だったのです。色は、オイル分を多く含む、黄色みを帯びたゴールデン・ビーンズが良質とされていて、手に持ってみると、まるでロウのような感触がして、ライターで火をつけてみると、煙が多く出てオイルが浮き出ます。味は甘みが多く豊かな味わいの物が上質とされます。イエメン・コーヒーを選ぶ基準にしてみてください。
イエメン国内では、コーヒー豆の大きさによってランク分けすることはありません。イエメンのコーヒー商社、K社の説明によると、昔から独自の方法により、コーヒーを四つのランクに分けて取引しているそうです。(別表参照)
それでは、イエメンの評価ランキングは、何を基準にして決められるのでしょうか。それは、産地の標高、香り、形、色、味、その年の収穫の良否など、総合的に判断されるそうです。産地は、低産地(1000m前後)のコーヒー豆は評価が低く、高産地(2000m前後)になるほど評価は高くなります。豆の香りは、フルーティーな香りが強い物が良質とされています。形は、イエメンのコーヒー豆はアラビカ種の原種に近いので、豆の形は全般的に小粒です。特に高産地になればなるほど、丸みを帯びた小粒な豆になります。脂肪が豊かで、豆が柔らかいので、脱穀(注・石臼を使用)をする時に、豆がセンターカットに沿って割れ、欠け豆になりやすいのです。
そうです!私たちが必死になってハンドピックで取り除き、捨ててしまっていた、あの欠け豆は、実はイエメンの優良コーヒーを示す「証明書」だったのです。色は、オイル分を多く含む、黄色みを帯びたゴールデン・ビーンズが良質とされていて、手に持ってみると、まるでロウのような感触がして、ライターで火をつけてみると、煙が多く出てオイルが浮き出ます。味は甘みが多く豊かな味わいの物が上質とされます。イエメン・コーヒーを選ぶ基準にしてみてください。
コーヒー原産地報告『待夢珈琲店』今井利夫