「ブン」と「ギシル」の2種類のコーヒー
一つは、焙煎したコーヒー豆(種)の粉を煮出して作るコーヒー(一般的にはターキッシュ・コーヒーと呼ばれている)で、イエメンでは「ブン」と呼んでいます。
もう一つは、コーヒーの皮殻(果肉)を煮出したコーヒーで、「ギシル」と呼んでいます。
イエメンでは、このギシル・コーヒーがよく飲まれていて、またの名を「イエメン・コーヒー」と呼ばれています。歴史的には、ギシルを飲む飲用文化は、ブンよりも古くからあったそうです。
ギシル・コーヒーの作り方は、地方や家庭によって加える香料の種類が異なりますが、簡単です。まず、水を入れたイエメン式ポットに、焙煎したギシル(皮殻)、ジンジャー、カルダモン、クローブ、シナモンなどの香料を加えます。砂糖をたっぷり入れ火にかけて煮出し、数分経ったら茶こしで漉しながらガラスのコップなどに注いで出来上がりです。
現在、世界でギシル・コーヒーを飲んでいるのは、イエメンとエチオピアの一部(主にイスラム教地区)の人達だけです。
(写真左)イエメン人は、皮穀を煮出して作るギシル・コーヒーをブン・コーヒーより好んで飲んでいる。
石臼歯脱穀法
ここで重要なポイントは、イエメンでは必ず石臼歯の脱穀機を使うということです。石臼歯は、コーヒー豆が欠け豆になりやすいし、コーヒーの生豆に石臼歯の破片(イエメン・コーヒーの生豆に時々白い石が入っている)が混入したりなどで能率的ではありません。
ヨーロッパ製の鉄製の硬質歯を使った高性能の脱穀機がいくらでもあるのに、なぜか「石臼歯」なのです。それは、高速回転の金属の刃ではギシルが粉々になってしまって、美味しくて良質なギシルにはならないからなのです。上質なギシルを作るためには石臼歯が欠かせないのです。
そして、石臼歯にはもう一つの秘密が隠されていました。それは、石臼の加圧脱穀法によって、イエメン・モカコーヒーだけにある、あのスパイシーで独特な香りのオイル成分を豆に附けているということでした。
(福岡 珈琲美美 森光理論)
ご家庭で作れるギシル珈琲
イエメン・ギシル珈琲の作り方
2人分 水約400ccを用意
- ① ギシル(皮穀)・・5グラム前後
- ② カルダモン・・約2個(中の種に香りがあるので殻を破いて入れる)
- ③ シンナモン・・少々
- ④ クローブ・・約3個
- ⑤ 粉末ジンジャー・・少々
①~⑤を鍋に入れ沸騰するまで煮出す(紅茶や緑茶とは違い沸騰させても渋は出ません)。
沸騰したら火を切り、少し冷めたら再度煮出す・・を繰り返すこと10分・・・、
ギシルが沈んで琥珀色になったら味を確かめ、砂糖を入れ好みの味に調整し
茶漉しで漉してカップ等に注いで出来上がり。
砂糖無しでもお飲みになれますが、砂糖を入れると味のバランスが良くより美味しいように思います。実際イエメンで飲まれているギシル珈琲はとても甘いです。
注いだ後のギシルは2~3度エキスが出ますので、水と砂糖と粉末ジンジャーを再度加えお楽しみ下さい。
冷蔵庫で冷まして「アイス・ギシル」にしたり、氷の入ったグラスに注いで「ギシル・オン・ザ・ロック」にしてもお楽しみいただけます。
家庭用ギシル珈琲(スパイス付)の販売について
店内ではお飲み頂けます。