いつもありがとうございます。前回は最も手軽なペーパー式ドリップ法を紹介いたしました。今回はその基となった「布(ネル)式ドリップ法」をご紹介いたします。
①ネルで淹れるコーヒーは、なぜ美味しいのか
「美味しいコーヒーは粗挽きネルドリップで・・・」、いうキャッチコピーを聞いたことはありますか?
ネルとはフランネルまたはリンネルの略で片面に起毛のある柔らかな布のことです。このネルの濾し袋を用いたネル式ドリップ法は日本でも戦前・戦後にコーヒーの抽出法として多くのコーヒー専門店、喫茶店等で主流をなしていました。シンプルな抽出法でありながら、コーヒー豆が本来持つ味と香りなど旨み成分をもっとも引き出す淹れ方で、ペーパーフィルターなど他の抽出器には決して出せない舌触りの滑らかな至極のコーヒーとなります。
今でもネルにこだわりつづけているコーヒー専門店やコーヒーマニアはいますが、「手間がかかる」と理由だけで、ペーパーフィルターを使用する方が多くなり、ネル式ドリップ法を使用する方や店は年々少なくなっています。
その原因はコーヒーの味にあるのではなく、ネルの管理に手間がかかる事にあると思います。ネルフィルターは使用す前に糊を落とすために湯で煮沸します。使用後は良く水洗いして水の入ったボールなどに浸し冷蔵庫に保管をすること等が求められます。空気と触れるような保管や洗浄が中途半端ですと、コーヒーの味に悪影響を及ぼします。しかし、充分に管理され種々の条件が整った最良の状態で淹れたネルドリップコーヒーはコーヒー豆が本来持つ味と香とまろやかさを最も引き出せる方法で、他の抽出器には決して出せない最高のエキスとなります。
今、サードウェーブといわれているコーヒーが流行していますが、次に来るのは、一杯に時間と手間と思いをかけるネルドリップだと私は確信しています。
ネルドリップ法は・・・
1)ネル布の形状、厚さ、織り方などを工夫して作ることによって、そのネルフィルターを駆りながら、自分が飲みたい、創りたいコーヒーを淹れることが出来る。
2)ネル布の収縮性及び起毛により、蒸らしで粉全体を満遍なく膨らませることができるので、やわらかな深みのあるコーヒーになる。
3)手で持ったネルを操りながら全体に満遍なくお湯を注すことで、香味成分を十分に抽出することが出来る。
ネル地の拡大写真
【参考資料】※片側起毛のネルフィルターの場合、起毛面は内側?外側?
これには諸説あり、ろ過能力だけについて言えばどちらでも大きな差はありませんが、一応、その違いを解説しておきます。内側にした場合、毛足がコーヒーの微粒子を先端で捉えて布目に詰まるのをさえぎり、クリアーな良いろ過が出来ます。しかし、起毛に付着した微粒子が洗いにくく、連続使用すると、洗浄によって起毛が減り、フィルターの寿命が若干早まる可能性があります。微粉の出にくい良質なカット歯のコーヒーミルであれば外側にするのが安定的に長く使用することが出来るように思います。
②「ネルドリップに必要な器具、道具」
1、サーバー:口の広いもの
2、ポット:圧力がかからず細いお湯が注げるもの
3、コーヒー:人数分(一人前約15g前後)
4、ネル布
5、布巾:ネル布は布巾で水気を切る。
6、その他、温水計、スケール、タイマーなど
➂ ネルの準備
新品のネル布には「のり」がついています。のりの付いたままで使用すると味に影響が出るため、新品のネル布を使用する場合は、コーヒー(出がらしでよい)で10分ほど煮沸してその後洗い流し使用する。使用の度に水できれいにもみ洗いをする。味と香りに影響するので、洗剤などで洗うことは避けましょう。
10回ほど使用したら、鍋などで10分ほど煮沸洗いをして、ネル布に付着している古い微粉などを取り除いてください。また、使用に関わらず1週間くらいたったネル布は、定期的に10分ほど「煮沸洗い」をしてください。
保存は、乾燥させないように水の入ったタッパなどに入れて冷蔵庫で保存してください。手入はこまめにしてください。長期使用しない場合は、水をたっぷり含ませてジップロックなどのビニール袋に入れて、冷凍庫で保存すると良い。
・・・次回は抽出の仕方を詳しくお話しいたします。
