シャルル=モーリス・ド・タレーラン=ペリゴール
「よいコーヒーとは、悪魔のように黒く、地獄のように熱く、天使のように純粋で、愛のように甘い。」
18世紀のフランスの政治家「タレーラン」の言葉です。
元来、コーヒーとは焙煎を深くして、熱くして、砂糖をたっぷり入れて、甘くして飲む飲み物だったようです。
しかし、現在、私たち日本人の多くはブラックでコーヒーを飲んでいます(欧米では「ブラック」というと、ミルクを入れず砂糖だけを入れるコーヒーのことも言うそうですが、日本では何もいれないコーヒーを言います)。
コーヒーに砂糖やミルクなど、何も入れずに(ブラック)、「美味しい!」と言って飲んでいるのは、世界でも日本人だけのようです。
私は、珈琲教室を7講座持っていて、毎月、約80人の方が受講しています。講座の初めにアンケートをしますが、
「あなたはどんなコーヒーを好んで飲んでいますか?」というアンケートでは、約8割の方が「中煎り焙煎のブラックコーヒー」と答えます。
中煎りの焙煎豆は、舌を差す酸味が消え、また、苦味がそれほど強くも出ず、香りもフルーティーで良く、旨味成分や甘味もほどほどで、ブラックで飲むにはバランスの良い焙煎濃度なのです。コーヒーは焙煎が浅くても基本、苦味の飲み物です。
しかし、ブラックを好んで飲んでいる方は、苦味が多く支配するコーヒーカップの中から、果樹の実の種(コーヒー豆)のフルーティーな酸味や甘味(果糖)など、素材の旨味を感じ取ることができるようです。
ただし、誤解をしないでください。
ブラックでコーヒーを飲むのが良いと言っているわけでもなく、そういった方が「コーヒー通」と言っているわけでもありません。
しかし、ブラックでコーヒーを飲むようになると、味覚の修練によってコーヒーの良し悪しや風味がとても敏感にわかるようになることは間違いないようです。
では、何故、日本人の多くはブラックでコーヒーを飲むようになったのでしょうか?
その答えの中に、私が目指す日本独自のコーヒー文化、「ジャパニーズ・コーヒー(日本基準のコーヒー)」の秘密が隠されているように思います。
ブラックコーヒー
それは、インスタントでもなく缶コーヒーでもなく、エスプレッソを使ったカプチーノやラテなどのような「世界基準のコーヒー」でもありません。
素晴らしい味覚を持つ日本人独自の「日本基準のコーヒー」なのです。私は、「日本基準のコーヒー」=「ブラックコーヒー」と思っています。
そして、ブラックコーヒーは「ドリップ式抽出」によってのみ確立されるように思います。ドリップで淹れたレギュラーコーヒーは、良質なコーヒーエキスだけを贅沢に抽出し、クリアーで、雑味がなく、ブラックで飲んでも十分美味しいコーヒーになります。
フランネルドリップ
ペーパードリップ
でもどんなドリップコーヒーでも美味しいというわけではありません。では、良いドリップコーヒーの条件とは?
- 新鮮な豆を使う
- 淹れる直前に豆を挽く
- 淹れたてを飲む
- ドリップ抽出である
いかがですか?大まかにはこの4点を守っていただくだけで良いのです。何も変わったことや特別なことがあるわけではありませんね。
最近のヒット商品である「コンビニの100円ドリップコーヒー」も、たったこの4点を実行しただけで、近年、多くの人に受け入れられたのです。
確かに、機械抽出ですのでそれほどレベルが高いとは言えませんが、それでも日本のコーヒーの消費量を2割引き上げるくらいヒットするのです。
しかし、コンビニ100円ドリップコーヒーを「ジャパニーズ・コーヒー」というつもりはありません。では、「ジャパニーズ・コーヒー」とは?
日本には世界ではとても珍しい、一杯のコーヒーだけを提供するために、コーヒーに対して努力と勉強を怠らず、人創り、店創り、環境創りを整え、精いっぱいの「おもてなし」の心でお客様をお迎えする「KISSATEN(喫茶店)」がありますね。
・・・では、次回は「喫茶店」の話をいたしましょう!
