コーヒー・グラインダー(ミル)の選び方 コーヒー・グラインダー(ミル)の選び方
コーヒー・グラインダー(ミル)の選び方

コーヒー・グラインダー(ミル)の選び方

更新日:2020年11月3日
手動式ミル

手動式ミル

いつもありがとうございます。

新型コロナウイルスがなかなか収まりません。

日本は環境衛生がしっかりしていますので、この程度で収まっていますが、ヨーロッパでは一日20万人も感染したなどのニュースが飛び込んできたりして、世界では日に日に感染が拡大しています。この先、いったいぜんたいどこに収まるのでしょうか?

新型コロナウイルスによって、人々の生活、環境、気持ち等がガラッと変化しました。最近、学生時代に読んだ、「災害や病気などの避けがたい死」、「罪なき人の死」など、世の中の不条理を書いたカミュの著「ペスト」を思い出します。

手消毒、マスク、こまめに換気、ソーシャルディスタンスなどが当たり前の毎日が、すでに10か月以上続いています。今ではマスクを付けていないと、逆に何か変な感じがするのは私だけでしょうか?当店の珈琲教室も4月から休みでしたので、何とか再開してほしいという声が多く、また、瑞浪市では3か月以上感染者が出ていないことも踏まえ、一部の教室を11月から再開することに決めました。

先ずは、わざわざご来店いただきお声をかけてくれた生徒さん方を中心に、1クラス5名程のソーシャルディスタンス方式で、紙コップ、ビニール手袋を使い、抽出、カッピングも互いに接触しないように細心の注意を払って行おうと思っています。先ずは5教室くらいから始める予定です。

カリタ

カリタ電動式「ナイスカット・ミル」

さて、最近は紙のフィルターにコーヒー「粉」が入っていて、紙を開封してカップの上にセットし、お湯を注ぐだけで出来上がる「ドリップパック」が流行しているようです。ギフトや引き出物などによく使われていますし、手軽で安価なコーヒーとして人気があるようです。よくお客様に「ドリップパックはありませんか?」と聞かれますが、「当店は扱っていません!」というと、「品揃えの悪い店だなぁ~」という顔をされてお帰りになられます(笑)

当店は私の信念としてドリップパックの販売はしていません。なぜならコーヒーで最も大切なことは、「鮮度」と考えているからです。

どんな新鮮な豆でも「粉」にしてしまうと、炭酸ガスが抜け、酸化が早まり、数時間で劣化が始まります。つまり、香りも味も悪くなるということなのです。よって、「粉」をパックして、古くなったコーヒーを販売するのは、香味を最も大切にしている自家焙煎珈琲屋の役割とは考えていません。

コーヒーは「生鮮食品」

新鮮なコーヒーは「安心、安全、香り高く、美味しい」です。コーヒー豆は淹れる直前に「挽く」ことがとても重要で大切なのです。

また、コーヒーミル(グラインダー)で挽く時のコーヒーの香りは素晴らしく、その香りは心筋梗塞の予防になるともいわれています。そういった意味で、私はドリップパック自体は否定しませんが、肯定、推奨することはしません。

近年、どの街にも自家焙煎珈琲店が2~3店舗ありますし、ネットで新鮮な豆の取り寄せも簡単にできるようになりましたので、とても良い時代になったと喜んでいます。しかし、豆のままでも賞味期間は約3週間から1か月(保存状態が良い場合)です。何か月たっても見た目は腐ったりカビたりしませんので、いつまでも「飲める!」と思っている方が多くいますが、とんでもないです(笑)。賞味期間が過ぎ酸化したコーヒーは、「過酸化脂質」なる物質が出て、体に悪影響を及ぼすのです。

よって、ミル(グラインダー)は良質でおいしいコーヒーの「必須アイテム」です。電動式や手動式、ミルの歯の構造の違いなど、いろいろなミル(グラインダー)があります。
今回は、自分に合った一台を見つけるために、ミルの性能、特徴などを詳しく説明しますので参考にしてください。

イタリア

今は製造を中止したイタリアの名品「ミネルバ・コーヒーグラインダー」

「コーヒーミル(グラインダー)で豆を挽く」

◎抽出の直前にコーヒーを挽く事は、良いコーヒーの必須条件!(新鮮なコーヒーは健康コーヒー)
美味しいコーヒーは鮮度が一番!しかし、粉にしてしまうと数時間で炭酸ガスや香りが抜けだします。炭酸ガスが抜けていたり、湿気を帯びたコーヒーは、抽出の時に膨らまず、灰汁がエキスと一緒に抽出されてしまい、雑味の多いエキスになります。また、古くなって酸化したコーヒーには「過酸化脂質」(※資料参照) なる物質が多く含まれるため健康を害するといわれています。

≪参考資料≫
「過酸化脂質とは?」食用油を長く放置すると嫌なにおいがしたり、日の当たる場所においてあったインスタントラーメンを食べるとおなかをこわしたりするのは、その中の油が空気により酸化され、劣化しているからです。この油の酸化により、過酸化脂質が生成されます。酸化とは、相手の電子を奪うことで自分が安定しようとする働きで、逆に酸化させられた側は、もとの安定した状態が壊されるわけです。リンゴの皮をむいてちょっと置いておくと変色して黒ずんでしまうのは、空気中の酸素によって酸化したからなんですね。

★「過酸化脂質による影響」 生体内の種々の老化現象に関与している他、ガン、炎症等の疾病にも関与しているといわれています。また加齢と共に、しみのような老化色素が肌に沈着することがあるが、これはリポフスチンと呼ばれる過酸化脂質とタンパク質が結合した色素といわれています。

では、良いコーヒーの条件とは・・・

① 好みの新鮮で良質な豆
② 良いコーヒーミル(グラインダー)・・必須条件
③ 良質な水
④ 良い抽出器
⑤ その他の備品(スケール、ドリップポット、サーバー、温水計、タイマーなど)
⑥ 良いコーヒーカップ
⑦ その他

それぞれどれも欠かすことができませんが、その中でも一番大切な事は、「良いコーヒーミル」です。良いコーヒーミルなくして、良い抽出もできませんし、体に良く美味しいコーヒーもできません。全ての始まりは素材の豆があってのことなのです。では、どんなミルが良いのでしょうか?

 

a)コーヒーミルの役割

コーヒーミル (coffee mill) は、焙煎されたコーヒー豆を粉砕するための器具で家庭用のものを指す名称です。

業務用はグラインダーと呼ばれることが多い。焙煎豆は豆のまま抽出しても、コーヒーエキスの抽出効率は低く、香味も乏しいので、ミルによって焙煎豆を細かく砕き、抽出効率を高め、また、抽出時間を短縮してコーヒーエキスを最大限引き出します。

b)良いコーヒーミルの条件

イ.豆を挽くときに発生する「摩擦熱」は品質変化、劣化させますので、なるべく熱が出ないミル
ロ.豆を挽くときに出る「微粉末(粉ではない)」が少ないミル。微粉末は雑味が出たり、くどいエキスになったり、抽出液が濁ったり、品質劣化が早くなったり、抽出時間オーバーになったりするなど、抽出や品質に影響を与えます
ハ.粒子(メッシュ)がなるべく揃うミルが良い。粒子が不揃いだと、淹れるたびに味が違う
ニ.粒子の調整が簡単にできるもの
ホ.使いやすく負担のかからないもの(体力的、金銭的?など・・)
へ.「自分のライフスタイルに合った機能、大きさのミルを選ぶ」・・一日に何杯淹れるのか?一回に何杯分淹れるのかによって、大きさ、機能など、それに合うミルを選ぶ
ト.「手動か電動」
チ.「耐久性と値段」・・一般的には安価なものほど耐久性がないといわれています

電動ミル

スイスの名品「ディティング・コーヒーグラインダー」

カリタ手挽きミル

カリタ手挽きミル

c)コーヒーミルの粉砕方法の種類 

イ.「臼式ミル(グラインドタイプ)」
のこぎり(凹凸)状の表面を備えた鋳鉄の固定歯(刃)と回転歯(刃)を備え、手動または電動で回転する。回転歯(刃)は円盤や円錐、または円筒状をなす。 コーヒー豆は2つの歯(刃)の凹凸の間で回転を与えられながら圧縮・打撃・剪断されて細かくなる。低回転しか与えられず放熱性に優れた鋳鉄製手動式の場合は問題とならないが、電動式では高速で回転するために粉砕された粉には高温が発生し、コーヒーを黒化変色させ脂質の加熱変化に起因するオフフレーバー(香り成分の逸失。味も香りも抜けてしまい、ただ苦味だけを感じる)が発生しやすい。機種にもよりますが、粒子度合いはそろいやすいが、濁りや雑味の原因になる微粉末が多く出る傾向にある。しかし、微粉末も味のうちと考えると、ミルクや砂糖を入れて飲まれる方には「こってり」とした味わいのコーヒーとなり好まれるようです。

ロ.「カッティングミル」
カッティングミルは、幾つもの刃が付いた2枚の円盤を向かい合わせて片方を回転させ、刃と刃の間で砕くことをその原理としている。円盤の間隔差により、粒子度合いの調整が可能である。この方式のミルは一般的には業務用に用いられるが、最近では家庭用の小型電動式や手動式のものもある。相対的に熱発生が抑えられる構造である。粒子度合いは若干そろいにくいが、微粉末の発生は少ない傾向にある。長く使用すると、磨耗により刃の部分に性能、品質劣化を引き起こす場合もあるので、刃の隙間調整や刃の交換など、定期的なメンテナンスが必要である。また、小石等が混じる粗悪なコーヒー豆を挽くと、刃に致命的なダメージを被る場合があるので特に注意。微粉末の発生が少ないので、ペーパードリップやコーヒーブレスには適していて、それぞれのコーヒーの特徴がそのまま抽出されやすいので、ブラックで飲まれる方には特に好まれるようです。

ハ.「ミキサーミル」
焙煎コーヒー豆粉砕に応用した機械。家庭用小型電動タイプのものに限られる。焙煎豆を入れるコンテナー内にプロペラをモーター駆動で高速回転させて豆を砕く。粒子度合いは回転させる時間により調整する。スイッチを押している時間が長くなるほど、細挽きになる。ただし、秒単位で粗さが変わるので、挽くたびに味が違う傾向にある。粒子度合いが極めて不ぞろいになりやすく、時間をかけすぎると、すぐに微粉末になり雑味だらけの味になるので、ミルを上下に振りながら、秒単位で止め、粒子を確認し挽くのが基本。安定して同じ味のコ-ヒーにはなりにくいが、短時間で豆を挽くことができる。

ニ.その他、大型工業用破砕機(ロールグラインダー)、リードミル(井上製作所)など特殊なミルが業務用として使われている。

《総評》

美味しくて、香り高く、安心安全なコーヒーを淹れて飲むには、良いコーヒーミルは(グラインダー)は必需品です。今回の解説を踏まえて、自分が好む味わいやライフスタイルに合ったミルを持ってください。
私は過去に、何万円するものから何百万円もするミルに出会い、購入して試し、今に至っています。私の珈琲屋の歴史は、良いミル(グラインダー)に出会う為の歴史でもあったように思います。ノスタルジックを楽しむには、手挽きのミルが良いかもしれませんが、今は電動ミルの性能が良く、手挽きのミルよりもはるかに優秀で、しかも安価になりました。

私が今勧める電動カッティング方式のミルは、カリタ「ナイスカットミルG」、電動グラインド方式のミルは、富士コーヒー機械製作所の「ミルっ子」です。

どちらのミルもしっかりしていますので、何十年も使用できますし、それほど高価ではありませんし、ザイズも大きくないので家庭で使用するには最適です。

ミルが一台あるだけで、健康的で、香り高く、美味しいコーヒーが毎日お安く飲めますよ。ぜひ、良いミルを一台お持ちいただきたいと思います。コーヒーの魅力の世界が広がり、コーヒーの持つすべての良さが楽しめますよ!

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