いつもありがとうございます。
新型コロナウィルの変異種の感染拡大で、第4波がやってきて、またまた世の中が大変なことになってまいりました。緊急事態宣言によって、飲食店のみならず百貨店や娯楽施設など、人が集まるところは、休業を余儀なくされることになりそうです。協力金が支給されるのですが、一体このお金はどこから工面され、誰が返済していくのでしょうか?
いずれにしても、ワクチンが全国民に接種され落ち着くまでは、我慢の日々となりますね。県をまたぐ移動の自粛要請が出ているのに、国をまたぐオリンピックは開催されるという事ですが、なんかしっくりいかないと思っているのは私だけでしょうか。
4月から珈琲教室基本編が始まりました。少人数で密にならずに消毒等をしっかりとして、プラスチックの使い捨てカップでカッピングを行って、極力感染予防に備えています。基本編に出られる生徒さんには、まず初めに、各人が日ごろ淹れている淹れ方で一人前のコーヒーを抽出していただきますが、今回も誰一人として正しい淹れ方をした方がいなくて、これからの教室がとても楽しみとなりました(笑)
さて、前回はヨーロッパで陶磁器の製造が発見されるところまで、お話をいたしましたが、今回からは、ヨーロッパ各地の銘窯を少しずつ紹介してまいります。まずは、ヨーロッパで初めて陶磁器が発明されたドイツからです。
18世紀の初頭ついに錬金術師の手によって、ヨーロッパで最初の陶磁器を作ることに成功したのが、ドイツのマイセン窯でした。1709年、ヨハン・フリードリッヒ・ベトガー錬金術師が、白色磁器の焼成に成功しました。
東洋の古磁器を愛したポーランド国王アウグスト2世の命により、ベトガーは研究、実験を重ね、高い温度で泥の成分を溶かし、新しい物質へと変化させるという西洋ヨーロッパでは初めての白磁作りの秘密を発見し、焼成に成功しました。それがヨーロッパの陶磁器製造の始まりなのです。
翌年、国王アウグスト2世により、1710年、ドレスデンマイセンのアルブレヒツブルク城にマイセン窯が誕生したといわれています。マイセンがヨーロッパで初めて磁器の製造に成功したのをきっかけに、西欧の各国で、次々と磁器製品が新たに発明されました。
昔のマイセンなどの西欧の磁器の絵柄を見ると、中国か日本の柿右衛門様式などを写したと思うようなものが大変多くみられます。それは、ヨーロッパでは当初、陶磁器の先駆者であった有田や景徳鎮の文様を模写したことから始まったからなのです。よって、創業当時のマイセンもかなり東洋的な絵柄が多く、何百年たった今でも作られ続けています。
特に、日本の有田焼(古伊万里焼)の柿右衛門の絵柄などは、ヨーロッパの陶磁器の手本となり、今でも高級カップとして人気があります。「有田焼」とは佐賀県有田町近辺で焼かれた白磁器製品で、伊万里港から出荷されたので「伊万里焼(古伊万里)」とも言います。
①「マイセン」
陶磁器の歴史の資料や情報を参考にまとめると、ヨーロッパで初めて磁器の製造を発見したのが、錬金術師ベトガーだといわれています。大まかに説明すると。18世紀初めのヨーロッパでは、東洋の磁器は白く、薄手で軽く、透明感があり人気を博していました。
ヨーロッパでは磁器製造ができなかったために、何とか磁器の秘密を解明しようと様々な努力がなされたようでしたが、簡単にはできなかったのです。成功にいたったのは18世紀、学者エーレンフリート・フォン・シュリンハウスと、錬金術師ヨハン・フリードリッヒ・ベトガーと、ザクセンのアウグスト国王によるものでした。「金属を金に変える」。これが錬金術師の仕事です。
ベトガーは、プロシア王フリードリッヒから金を作り出すことを命じられましたが、成功しなかったため逃亡。1701年ザクセンのアウグスト国王のもとにやってきました。国王もベトガーに金の変性を命じましたができず、投獄してしまいますが、1703年に逃亡してつかまり、送り返されたそうです。王の命令で、錬金術は諦め、今度はシュリンハウスとともに陶磁器の開発に携わることとなりました。
錬金術の経験をもとにベトガーはあらゆる種類の粘土を配合し、様々な温度で焼成し実験を重ね、1707年に出来上がった最初の磁器が「赤いストーンウェア(ベトガー炻器)」といわれています。
その後白い素地が出来上がる実験を続け、1708年1月15日、とうとうヨーロッパ初の白磁器が出来上がったのです。その後1710年、ドレスデンに設立した磁器工房を大量生産するために、マイセンのアルブレヒツブルク城に移し、「マイセン窯」が誕生しました。
世界で最も有名なマイセンは、過去使われてきた原型や資料を保管・伝承し、技術を守り、歴史ある手書きの古典磁器を作り続けています。一方、今を感じさせる新しいシリーズの創作にも積極的に取り組み、発表して高い評価を得ています。
【寸評】マイセンといえば陶磁器の好きな方なら誰でもが知っている世界ナンバーワン陶磁器といえるでしょう。年代物のコレクターアイテムのフィギュアやカップ等などは、かなりの高値で売られていますし、現在制作されているデザインの陶磁器もそれに比べれば安価とはいえますが、それでもかなりの高値ですので、手軽に買い求めるという訳にはいきません。
私は代表的なブルーオニオンのコーヒーカップを数客と歴代のバックスタンプが描かれている、開窯300周年記念に発売されたコーヒーカップとポットを所有していますが、それ以外のカップ等は何度も手に入れようと思いましたが、なかなか購入していません。
なぜなら、店で使用するには、形がスタンダードではなく店の使用品としては向かないからなのです。所有しているブルーオニオンのカップ自体も、とても大きく店でお客様に出すには向きませんので、指名がない限りほとんど使用することはありません。また、ブルーオニオンのコーヒーカップの皿は深く作られていて、その容量はカップの容量と同じ量なのです。
では、なぜ、ヨーロピアンスタイルといわれるカップの皿は深く作られているのでしょうか?古い文献に「コーヒーをソーサで・・・」という記述があります。昔はコーヒーをお皿で飲んでいたらしいのです。なぜなら、「コーヒー熱くて黒きものなり・・」といわれていましたので、ソーサに移して冷まして飲んだのでは?はたまた、18世紀のころは、浸漬式のトルコ式コーヒースタイル(ターキッシュコーヒー)の淹れ方で、コーヒーを濾すことなく飲んでいたので、カップで粉が沈むまで待ち、その上澄みをソーサに移して飲んだのでは?などと、私は考えていますが、今のところ真実は定かではありません。
いずれにしてもヨーロッパのオールドスタイルのコーヒーカップのソーサは、深く作られているものが多いのです。
ビレロイ&ボッホ・コーヒーカップ
【その他の名窯】
②「ビレロイ&ボッホ」
フランソワ・ボッホにより、マイセンに遅れること39年後の1748年に、現在のフランス・ロレーヌ地方に創業した名窯。その後、1836年、同業者でありライバルでもあるビレロイ家と合併して「ビレロイ&ボッホ」となり、ドイツに本社を構える。以後工業化を推進し、いち早く機械化と量産体制を堅め、マイセン、ロイヤルコペンハーゲンに並ぶ世界三大陶磁器メーカーの一つとなる。
また、1976年にドイツ最大規模の高質陶磁器製造会社<ハインリッヒ>、1986年には陶磁器メーカー<ガロ・デザイン>、1989年にはシルバーウェア・メーカー<コック&バーグフェルド>を吸収して、現在のテーブル・ウェア部門の基盤を築く。
【寸評】伝統的なデザインというより、新しいデザインのデーブルウェアーメーカーという製品で、厚手の生地が多いが質は良い、若者に喜ばれる現代的なデザインが新鮮で人気がある。私も40年前から収集していますが、機能的でとても使い易く日用品として使用しています。
③「ベルリン王立磁器製陶所」
ベルリン王立磁器製陶所(KPM Berlin)は、1763年9月19日にフリードリッヒ大王によって創立された製陶所。製品マークは、コバルトブルーの 王の笏(しゃく)がすべての製品に付けられている。装飾されたKPMの磁器は、絵職人のマークと絵付けマークも描かれている。KPM のすべての磁器の装飾画は、フリーハンドで描かれている。
【寸評】日本ではほとんどなじみがないが、すべて手書きで描かれていて歴史を感じさせる趣がある。値段が高くコレクターアイテムとして一部の方が収集している程度ですが、コーヒーカップなどは実際に使ってみるととても使い易い。
④「フッチェンロイター」
1814年、カルル・フッチェンロイターによって創業された名窯。父親が陶磁器の絵付け工場を経営し、もともと絵付けの心得はあったが、陶磁器を原料から作り出すべく、バイエルン地方で白磁の原料となるカオリンを発見し、ここに工房を開いた。創業以来、伝統を重んじ「人間の手に勝る技術・機械は存在しない」という信念を貫き、数百人の手を経て白磁が完成され、絵付け作業は手作業にこだわっている。
【寸評】代表作にブルーオニオン・プレミアムなどがありますが、新しいデザインというよりも、昔からのデザインの継承という傾向の製品が多く、あまり購買意欲がわきませんので、日本では販売しているところがほとんどないのが現状です。
ローゼンタールのコーヒーカップ
ローゼンタールの高級磁器は内側から透かしても柄が見えるくらいに透明感がある!
⑤ ローゼンタール有限会社 – ドイツの磁器製造企業
1879年、フィリップ・ローゼンタールがドイツ南部バイエルン州のエアカースロイト城に絵付け工房を開きました。比較的新しいローゼンタールは歴史は浅いが、芸術と実用品の融合を目指し、個性溢れるデザインで技術と近代的な生産設備によって、瞬く間にヨーロッパを代表する磁器メーカーへ成長しました。
ローゼンタールは、モダンスタイルを発信する’スタジオライン’が有名で、多くのデザインアワードを受賞するテーブルウェアのトップブランドです。しかし、2009年に親会社でアイルランドの陶磁器大手ウォーターフォード・ウェッジウッドが経営破綻(はたん)したことで、資金繰りが困難になり、一度倒産してしまいましたが、その後再建して今も素晴らしいテーブルウェアーを作り続けています。
【寸評】個人的には大好きなメーカーで、44年前の開店時からたくさんのカップを収集し所有しています。生地が薄くて透明感があり、デザインもモダンで素晴らしく、多岐にわたる才能を発揮したデンマーク出身のビョルン・ヴィンブラッドの”千夜一夜物語=アラビアンナイト”を題材にしたカップは、美しく深いブルーの地に色彩豊かにアラビアンナイトの物語の一コマを描いたシリーズで、私のお気に入りのカップです。歴史にとどまることなしに、いろいろなデザイナーを採用して、上質で高級感のある素晴らしいカップを発表し続けました。
一時期、名古屋栄の松坂屋南館の一階に専用の売り場があったほど人気がありましたが、奇抜すぎるデザインや陶磁器離れの時代となり、残念ながら、いつのまにか売り場がなくなってしまいました。
・・・・などがドイツでは代表的な窯元です。
次回のPart3は,その他のヨーロッパの名窯をご紹介します。
