コーヒーに適した「水」の選び方 コーヒーに適した「水」の選び方
コーヒーに適した「水」の選び方

コーヒーに適した「水」の選び方

更新日:2020年12月4日
ふくらむ

いつもありがとうございます。
新型コロナウイルス第3波が猛威を振るっています。年末年始の人が最も移動する時期に、またまた時間短縮要請や移動自粛要請、Go to travel一部地域の停止などが発令されました。特に、忘年会や新年会をメインとしている飲食店は死活問題です。

我々珈琲屋、喫茶店も体力がどこまで持つか心配で、不安な日々を過ごしています。こんな時期でも、ご来店いただくお客様には心より感謝申し上げます。

さて、新型コロナウイルス感染拡大によって、家庭でコーヒーを淹れて飲む方が増えました。家庭でコーヒーを淹れることは、そんなにむつかしくはないのですが、基本だけは知っていないと、毎回同じ美味しいコーヒーを淹れられるというわけにはいきません。コーヒーは飲んで感じ取るものですので、ネットや本でいくら知識を詰め込んでも味覚は育ちません。
当店の珈琲教室では、淹れ方と同時に「カッピング力の向上」も重点的に行っています。今年の4月から約8か月間お休みしていた当店の「珈琲教室」も、何とか11月から始めました。まずは、今まで継続している14講座の一部、5講座から始めました。12月からは初心者向けの教室も始めようと思っていましたが、最近のコロナ事情で開講することを少し躊躇しています。

さて、この数回で美味しいコーヒーの条件をいろいろ書いてきましたが、今回は「コーヒーと水」の関係を知っていただこうと思います。おいしいコーヒーに不可欠なもの、それは水です。どの水が一番おいしいかではなく、どんな水がどのコーヒーにあうのか?水によってどのように香味が変わるのか?それぞれの水による味の違いを知ってください。

水と一口に言っても、硬水、軟水、アルカリ水、酸性水、水素水、水道水、井戸水などなどいろいろあります。実は、飲んで美味しい水=コーヒーが美味しくなる水とは限りません。それは、水に含まれるミネラル分などが、コーヒーの色や味に影響を与えるためです。通常ミネラルが多すぎても、少なすぎてもバランスが悪くなるといわれています。

どの水がどのコーヒーと一番バランスが取れるのか?
豆の焙煎濃度と水との相性は?

などを理解すると、より良いコーヒーが抽出でき、一段と美味しいコーヒーが淹れられますよ!しかし、すべては個人の「味覚」によりますので、絶対的ではないということだけは覚えておいてください。
今回は代表的な水を選んで、それぞれの水がコーヒーの味わいにどのように影響するのかを説明いたしますので、参考にしてください。

①《軟水》

軟水

軟水

水に含まれるカルシウムやマグネシウムの合計量を炭酸カルシウムに換算して、水1リットルあたりの含有量が100㎎/リットル以下の場合は軟水。つまり、カルシウムとマグネシウムが少ない水が軟水ということです。

軟水はミネラル分が少ないため、コーヒー成分と喧嘩をせず、本来の香りや味わいを楽しむことができます。浅煎りのコーヒーは苦みが少なくエキス自体が淡いので、軟水でいれると、より苦みが少なくなり、まろやかな香味となります。 また、軟水は口当たりが柔らかで、香りや風味を大事にする緑茶などの飲み物に向いていますし、他に、かつお節や昆布のダシを取ったり、豆腐や麺類などの仕込みにも適しているといわれています。
一方、カルシウム分は苦味を抑えまろやかになり、マグネシウム分が多いと苦味や渋味を感じやすくなります。軟水はミネラル分が少ないので比較的コーヒーの苦味が出にくいといわれています。

②《硬水》

超硬水コントレックス

超硬水コントレックス

水に含まれるカルシウムやマグネシウムの合計量を炭酸カルシウムに換算して、水1リットルあたりの含有量が100㎎/リットル以上の場合は硬水で、つまり、カルシウムとマグネシウムがたくさん入っている水が硬水です。硬水は口に含むと引き締まった味があり、冷やせば清涼感は増します。

硬水にはミネラル成分が多く含まれていますが、このミネラル分はその含有量によってコーヒーの成分に影響を与えます。「ミネラル」とは水中に含まれる鉱物質の事で、カルシウム、マグネシウムもこの鉱物の一種です。

硬水は水中にカルシウム、マグネシウム分が多いので、深煎りで、しっかりした味と苦みを楽しみたい時には適しています。両物質がいっぱい入っている水が「超硬水」で、この種の水を使ってしまうと、コーヒーに含まれる「クロロゲン酸類」、「タンニン」と結合しすぎるため風味を損なうようです。また、日本の水は軟水のため、不慣れな味に感じるかもしれません。

他に、硬水は、食事の際に、飲むと口の中がさっぱりするとか、スポーツの後のミネラル補給や、妊産婦のカルシウム補給、便秘解消、ダイエットなどにも効果があると言われていますし、酒の醸造用など菌を使用する飲み物には向くようです。

③《中間硬水》

中間硬水

中間硬水

硬水と軟水の間で、カルシウムが適度に含まれた硬度101以上300以下の水を「中間硬水」と呼んでいます。「中間硬水」は、中程度の硬水のため、深入り、中煎りどちらにも、ほどほど適していると言えるでしょう。

他に、米を炊いたり、料理全般に用いるほか、紅茶を淹れると美味しく飲むことができるようです。

④《日本の水とヨーロッパの水》

日本の水はそのほとんどが軟水であるのに対し、ヨーロッパは硬水が中心です。どちらがコーヒーに適しているかは一慨には言えません。ただ、水に含まれるミネラル分である。カルシウムやマグネシウムが多すぎると、コーヒーの主成分であるカフェインや良質のタンニンの抽出が妨げられてしまいます。一方、コーヒーの苦味は、硬度の低い水には溶解しにくく、硬度の高い水になじむ性質もあるようです。
硬水と軟水、どちらがコーヒーに適している水かは、意見が分かれるところです。たとえば、マイルドなコーヒーを好むのなら軟水で淹れた方をより美味しいと感じると思います。また、苦味のコーヒーが好きなら硬水を使用した方が、苦味に切れが出て美味しく感じるようです。よって、日本では苦みの少ない中煎りのマイルド系を好み、ヨーロッパはコクと苦みの強い深煎りのフレンチ系のコーヒーが好まれているのです。

⑤《カルキ(塩素)入り水道水》

日本の水道水はほとんどが軟水です。質は世界的にみてかなり高い水準にありますが、雑菌・有機物などを取り除くために塩素処理をしています。その含有量が多い地域ほど塩素濃度が高くなり、反応結果としてカルキ臭になります。当然、カルキ入りの水は、コーヒーや紅茶・お茶などの味や香りに影響を与えますので、そのまま使用することはお勧めできません。

⑥《カルキを取り除いた水道水》

カルキを抜くには浄水器、ろ過機が適しています。確かに数十分沸騰させることでもカルキを軽減させることができますし、汲み置きして一日以上たった水などでも軽減することができますが、水の鮮度が落ちるのでお勧めできません。水の鮮度はとても重要な要素の一つです。

⑦《沸かして時間の経った水》

コーヒーに使用する水は、二酸化炭素がいくらか残っている状態がベストで、長時間沸騰させた後の水や二回以上沸騰しなおした水は、水の鮮度が落ち、水中の二酸化炭素が残っていませんので、味が十分に抽出されません。
前にも述べたように、水の鮮度はとても大切なのです。こだわりの珈琲店などは、注文が入ってから新鮮な水を汲み、お湯を沸かしています。新鮮な沸かしたてのお湯を使って淹れたコーヒーは、香味が多くでてボディーの強いエキスになります。10分以上沸騰させたお湯で淹れたコーヒーは、香味が薄くボディーの弱いエキスになるようです。やはり水の鮮度を保ちカルキを取り除くのなら、活性炭が入っている濾過器を取り付ける事が良いでしょう。
また、水道管が古くなっていたり鉄分の多い地域の井戸の水などは、鉄分がコーヒー中のタンニンと結びついて味を悪くしますので使用しないほうが良いでしょう。

《総評》
日本では昔から、「湯水のごとく」という慣用句があるように、全国どこでも水とお湯は豊富に出ました。井戸を掘ればそのまま飲める水が容易に湧き出て、山からの湧き水が安心して飲めました。

残念ながら、今は公害などに汚染されて安心に飲める井戸水などが、どこでも飲めるという時代ではなくなってしまいました。

よくお客さんから・・・、
「どこどこの水を使ったら美味しいコーヒーが出来上がりました!」
「ペットボトルで売っている、ナニナニ水を使ったら美味しいコーヒーができました!」
などという言葉を聞きます。

コーヒーは水によって香味が違います。紅茶や緑茶などに比べ、コーヒーはエキスの濃度が濃いので、微妙な違いを感じられる方は少ないですが、確かに違います。よって、それぞれのコーヒー豆にあわせて水を選ぶと、より良いエキスが抽出できます。

例えば、フレンチローストの豆は、硬水系の水を使って淹れることで、苦味が爽やかな味になります。ハイローストの豆は、日本の水道水に使われているような弱軟水や中間硬水の水を使って淹れることで、まろやかな味になります。ライト系の豆は超軟水で淹れると酸味のキレがよく、ソフトな味になります・・・、といったように、まずローストの濃度によって硬度を選ぶとわかりやすいと思います。

また、個人の味覚はそれぞれ違いますので、これはあくまでも一般論で絶対論ではないということを心に留め置いてください。それぞれの特徴を知り、自分に最も合う水を根気よく探し出してください。

今、市販で売られているミネラルウォーターは、硬水、軟水、中間硬水などの様々な水がありますので、いろいろ試してみるのも良いでしょう。また、中京地区の水道水は弱軟水でとても良い水ですので、浄水器だけ通せばショップでわざわざ高い水を買う必要は無いですよ。

一度水を見直してみましょう!

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