ギシルコーヒー
前回はコーヒー発見伝説のお話をいたしましたが、どちらの話も始まりはコーヒーの赤い実(果肉)をそのまま食べて、効用を発見したところは共通していますね。
しかし、私たちが日ごろ飲んでいるコーヒーは、実ではなく種(豆)を焙煎、抽出してエキスにしたものなのです。
コーヒーの実(コーヒーチェリー)
アカネ科の常緑樹のコーヒーは、白い花が咲き緑の実をつけます。その後熟し、6~8ヶ月位すると赤いチェリーのような実になります。
もともとフルーツの部類に入りますので、その赤い実は、食べるとほんのり甘く、軽い酸味があり、とてもおいしいです。
しかし、赤い実は摘むと2~3日でカビが生え腐ってしまいます。そこで、摘み取って1週間から2週間ほど天日乾燥して、ドライフルーツとして保存して、それを必要に応じて食べていたのです。
その後、乾燥した実を軽く火を通し、煮出して(サルタナコーヒー、ギシルコーヒー)飲むようになったといわれています。
そうです!コーヒーは火と出会い「飲み物」として劇的に変化したのです。その後、コーヒーの実を果肉(皮穀)と種(豆)に分けて楽しむようになりました。果肉を使ったコーヒーは「ギシル」と呼び、種(豆)を使ったコーヒーは、「ブン」と呼んで、それぞれを必要に応じて飲み分けていたようです。
しかし、時代の流れの中で世界の人々は、あの馥郁たる香りと苦味のブンコーヒーを選んだのです。
残念ながら、漢方薬効果のあるギシルコーヒーは世界に広まることもなく、今では、イエメンやエチオピア・ハラール地方の一部でしか飲まれていません。
ギシル(コーヒーの皮穀)
〇「ギシルコーヒー」とは?
コーヒーの赤い実の果肉を乾燥させた「皮殻」を使って作るコーヒーです。イエメン人は何故か今でもこの「ギシルコーヒー」を好んで飲んでいます。コーヒーのルーツとも言われ、その昔、サルタン(権力者、王様)だけに飲む事が許された大変貴重なコーヒーです。
その味は私たちが日ごろ飲んでいる芳ばしい香りと苦味が特徴のコーヒーとはまったく違い、透明感のあるライトな味わいで、どちらかというと「フレーバー・ティー」か、漢方薬の「葛根湯」によく似ています。とても血行促進に良い健康飲料で飲むと体が温かくなってきます。
シナモン
ジンジャーの粉末
クローブ
カルダモン
鍋で煮だす
《イエメン・ギシル珈琲の作り方》・・2人分(水約400CC)
① ギシル(皮穀)・・5グラム前後
② カルダモン・・約2個(中の種に香りがあるので殻を破いて入れる)
③ シンナモン・・少々
④ クローブ・・約3個
⑤ 粉末ジンジャー・・少々
①~⑤を鍋に入れ沸騰するまで煮出す(紅茶や緑茶とは違い沸騰させても渋は出ません)。沸騰したら火を切り、少し冷めたら再度煮出す・・を繰り返すこと10分・・・、ギシルが沈んで琥珀色になったら味を確かめ、砂糖を入れ好みの味に調整し茶漉しで漉してカップ等に注いで出来上がり。
砂糖無しでもお飲みになれますが、砂糖を入れると味のバランスが良くより美味しいように思います。実際イエメンで飲まれているギシル珈琲はとても甘いです。注いだ後のギシルは2~3度エキスが出ますので、水と砂糖と粉末ジンジャーを再度加えお楽しみ下さい。
この写真の説明文
・・・私は、数年前、日本へのギシルコーヒー輸入に初めて成功しました。ご興味ある方は当店ホームページ、珈琲トピックスをご覧ください。
