インドネシアのコーヒー インドネシアのコーヒー
インドネシアのコーヒー

インドネシアのコーヒー

更新日:2022年6月10日
コーヒー栽培の経歴

コーヒー栽培の経歴

珈琲の栽培のルーツは、エチオピアに始まりイエメンに植樹され(実は最近、イエメンにも原種(母体品種)が存在していたとの記事が出ました)、インド~インドネシアと伝わり、オランダ東インド会社がインドネシアでモノカルチャー(特定商品)としてのコーヒー栽培(プランテーション)を始めました。実はそこから、珈琲は商売の為の商品として大きく変換していったのです。

その後、インドネシアからオランダの植物園に苗木が運ばれ、フランスの植物園に寄贈。フランス海軍将校のド・クリューが1723年に大西洋の「マルティニーク島」に植樹して、その苗木が南米や中南米へと広まり、モノカルチャーの珈琲栽培が広まりました。最終的には、ブラジルの広大な土地で黒人奴隷を雇い、安価なコーヒーが大量に作られ、大量生産時代となりました。

私は今まで多くの珈琲生産国に行きましたが、その旅は、珈琲の歴史を辿る旅でもありました。栽培の始まりといわれるエチオピアに3回、飲用の始まりといわれているイエメンに4回、プランテーションとしての初めての国インドネシア、大量生産の最大国ブラジルなども視察してきました。また、もう一つの栽培のルートといわれているアフリカのエチオピア、タンザニア、ケニアの視察の旅もしてきました。

後は、コロナが収まったら、数年前からの念願でもあるインドのコーヒー視察に行きたいと考えています。最後に、現役引退したら(??)、ゆっくりと、「マルティニーク島」に行きたいと考えています(笑)

コーヒーの実

コーヒーの実

①【インドネシアにおけるコーヒー生産の歴史】

インドネシアにおけるコーヒー生産の起源は、オランダ植民地時代に遡ります。オランダ東インド会社は、イエメン~インドに渡ったコーヒーの樹(または豆)を、当時、植民地であったインドネシアのジャワ島に持ち込み、栽培を始めました。1830年代には、本国に輸出するために強制栽培制度を開始し、モノカルチャー(特定商品)としてプランテーションを開始しました。ここからコーヒーは味よりも生産性(量)を重んじて、利益を生む商品となって行ったのです。

アラビカ種の生産は、1860年代~1880年代にかけてアジア地域に広がったコーヒーの天敵といわれるサビ病の被害にあい、生産量が衰退してしまいます。その後、それまで栽培していたアラビカ種から、香味は劣るが、病害虫に強い品種ロブスタ種を導入し、コーヒー生産量だけは回復しましたが、90%がロブスタ種となりました。

インドネシアのアラビカ種は生産量は少ないですが、豊かな大地と特有で温暖な気候、豊富な降水量などの良質なコーヒーの好条件が揃っていますので、ボディーの強い上質なコーヒー豆が生み出されます。ボディーの強いコーヒーは、ミルクと合わせても味が負けないので、追カプチーノやラテなどが主力商品のスターバックスで多く使用されています。その使用量は日本人国民が飲む総量と同じだといわれています。

②【インドネシアで生産されるコーヒーと品種】

豆の品種としては、ロブスタ種(カネフォーラ種)が90%、アラビカ種が10%となっています。ほとんどが、ウォシュド(水洗い)のコーヒーですが、アラビカ種のマンデリンなどは、スマトラ式といわれる独特な精製方法が行われていて、芳醇な香味を醸し出し、コーヒーマニアには人気です。

また、ジャコウ猫の糞から豆を取り出すという世界でも大変珍しい「コピ・ルアク」など、超高価なコーヒーもあります。

◎ ロブスタ種(カネフォーラ種)

インドネシアでは、ロブスタ種(カネフォーラ種)が全体の90%を占めており、ほとんどがこの品種だということが分かります。最も顕著な特徴としては、病害虫に強いということ。アラビカ種は病気に弱く、1900年代初頭に流行したサビ病でアラビカ種が大ダメージを受けたことから、インドネシアではロブスタ種(カネフォーラ種)に植え替えられたという歴史があります。また、栽培に手がかからず、安価で手に入れることができます。

味の特徴としては、独特の渋み・苦味・香りが強く、酸味が少ないことが挙げられます。ブレンドコーヒーのアクセントとして使用されたり、インスタントコーヒーにも使われています。カフェインや油分が多いのもこの品種の特徴です。

但し、インドネシアのロブスタ種は高品質で、「ジャワロブスターWIB」はエスプレッソやアイスコーヒーのアクセントとして使われ、ロブスタ種の中でも高級品として人気があります。

◎ アラビカ種

アラビカ種は、ロブスタ種(カネフォーラ種)に比べ流通量は全体の1割程度です。病害虫に弱く生産性も悪いことから、ロブスタ種(カネフォーラ種)へ植え替えられたため、インドネシアでは生産量が少なくなっていますが、世界全体を見ると、生産量の約7割はアラビカ種です。

インドネシアのアラビカ種の元はティピカです。スマトラ島の「マンデリン」の一部をはじめ、スラウェシ島の「トラジャ・カロシ」には、未だにティピカが残っていますが、ほんの極わずかにすぎません。ほとんど品種改良を施したハイブリッド種で、アテン、スーパーアテン、チモール、カチモール、ティムティムなど雑多種におよんでいます。

全体的な味の特徴としては、酸味強く独特な芳香と強さがありますので、だいたいが深煎りに焙煎して、コク・苦味の珈琲に仕上げる傾向にあります。

コーヒーの実2

「インドネシアのコーヒー産地」

インドネシアはたくさんの島からなる国ですので、産地というより島々によって味わいが違います。それぞれの島のコーヒーの特徴を知るととても面白いですよ!

◎【ジャワ島】

ジャワコーヒーは、17世紀末のオランダ統治時代に、インド産のアラビカ種の苗木がオランダからジャワ島に持ち込まれたのが始まりです。アラビカ種を限定して示す場合は、「ジャワ・アラビカ」と呼ばれます。ジャワロブと呼ばれるロブスタ種(カネフォーラ種)は、苦味だけが特徴の味わいですので、そのままストレートで飲むには癖が強いので、一般的にはブレンド用で使用されています。

◎【バリ島】

キンタマーニ高原で生産される「キンタマーニコーヒー」は、マイルドな口当たりで美味しいと高評価のコーヒー豆です。キンタマーニ高原には、コーヒー農園が多く存在していて、肥沃な大地と高原ならではの気候で上質なコーヒー豆ができることで知られます。コーヒーと一緒に果物や野菜も栽培されることから、香りを吸収してフルーティーでマイルドな味わいになるとも言われています。バランスがよく他のインドネシアに比べ、味が強すぎないので癖がなく飲みやすい。

◎【スマトラ島】

インドネシア全体のコーヒー生産の約75%を占めるスマトラ島では「マンデリン」というアラビカ種のコーヒーが有名です。

① リントン地区
島北部のリントン・ニ・フタ地区で栽培される「リントン・マンデリン」、トバ湖の湖畔で栽培される「マンデリン・トバコ」などがある。産地は標高1800~1900mの高原地帯で肥沃な土壌で栽培されている。苦みとコクを中心とした味わいが特徴で、味は深いコクがあり、独特の風味と強さがあることから、カフェラテやカプチーノなどのミルクと合わせるコーヒーには適しています。よって、スターバックス社が使用しているコーヒーの中心となっています。実際、日本人全体が使用するマンデリンの総量とスターバックス社の使用量とは、同じ量だともいわれています。

マンデリンは、昔から日本では根強い人気があり、「マニアのコーヒー」と呼ばれていて、コーヒー好きな人にはたまらない味わいのコーヒーのようです。

② アチェ地区
スマトラ島の北東部アチェ州の優良産地は、中央高地のタケンゴン地区、標高1200~1900mの山岳地帯で酸味豊かな高品質のコーヒーが栽培されています。タケンゴン地区には210ほどの村があり、27万人の方が暮らしていて、気候、豊かな降雨量、肥沃な土壌に恵まれ、価格はリントン地区の豆よりも高価です。

いろいろな品種が混雑していて、品種によっても随分香味が違いますが、私が今最も注目している品種としては、ティムティムという長大系の通称馬面(ウマズラ)・マンデリンです。希少で高価格のコーヒーですが、ミルキーな味わいのソフトなコーヒーですので、是非一度お飲みいただきたいですね。

◎【スラウェシ島】

通常トラジャと呼ばれていて、インドネシアのスラウェシ(セレベス)島トラジャ地方で作られている高級コーヒーの銘柄です。アラビカ種のなかでも最高峰と名高く、オランダ王室御用達でもありました。

第二次世界大戦をきっかけに、一度は市場から消えてしまいましたが、日本のキーコーヒーの情熱で1970年代に「トアルコトラジャ」として復活しました。「トアルコ」とはトラジャコーヒーを復活させたキーコーヒーの「登録商標」で、「トラジャ(toraja)」「アラビカ(arabica)」「コーヒー(coffee)」から頭文字を2つずつ取って名付けられたものです。

よって「トラジャ」という名前を付けることは出来ませんので、一般品には、カロシ地区で採れることで「スラウェシ・カロシ」と呼ばれています。味わいは芳醇な香りと、コク、クリーミーなまろやかさも持ち合わせた優しい苦味で、ストレートでバランスが良く飽きずに飲めるのがポイントで、ブラックで飲む日本人の味覚には合います。

【インドネシアコーヒー総評】

2004年に自らインドネシアに出かけ、ジャワ島とスマトラ島の産地を巡ってきました。赤道直下で雨量が多い国ですので、高温多湿で日本の真夏によく似ています。湿度が多いとコーヒーの天敵「さび病」が発生しますので、暑さとさび病に強いロブスタ種が多く栽培される理由が、良く分かりました。

しかし、私はインドネシアのコーヒーが好きで常に数種類ご用意しています。扱っているのはすべてアラビカ種のコーヒーで、スマトラ島のリントンとアチェ、スラウェシ島のカロシは定番商品としてありますし、ジャワ島のアラビカ種もたまに扱います。

その中でも、スマトラ島のリントン・マンデリンなどはマニアのコーヒーと言われていて、コーヒーを飲みこんでいくと、リントン・マンデリンや原種のイエメン・モカに行きつくと言われています。

マンデリンはとても大粒で、逆にイエメン・モカはとても小粒で、豆の大きさは正反対ですが、どちらも柔らかい豆で酸味と味わいが豊かです。浅煎りでも味ができますが、こういった豆は深く焙煎してその良さが発揮されます。焙煎が難しく、店によって技術の差が顕著に出ますので、この2種類の豆がうまく焙煎できれば、技術の高い店といえるでしょう!

今、サードウェーブという新しい時代の波は、苦味が少なく、香り豊かなコーヒーが流行っていますが、コーヒー本来の味わいはやはり苦味の中にあると思います。苦味の中の香り、苦味の中の酸味、苦味の中の甘味など、コーヒーの最大の魅力はやはり苦味の中にこそあると思います。

今一度、昔から人々を魅了してきた深煎りコーヒーを、自家焙煎珈琲屋に行って、まずはマンデリンかイエメン・モカの深煎りコーヒーを味わってみてください。飲み方としては、まずはブラックでお飲みいただき、苦味の中にある甘味、コク、フルーティーさ、フローラル感などの複雑な香味を楽しんで頂き、砂糖やミルクやチョコレートなどともマッチングが良いので、その後に、いろいろなバリエーションコーヒーとして楽しんでみるのも楽しいですね。

コーヒーの魅力がまた一段と広がりますよ!

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