いつもありがとうございます。
先日、「マツコの知らない世界」に、このブログでも以前紹介した(2016/4/17 珈琲の旅~福岡 Part3)九州 福岡「豆香洞」の後藤直紀さんが出ていましたね。
「マツコの知らないコーヒーの世界」さすがに要点を的確に堂々とおしゃべりしていましたね。でも、テレビの30分で伝えられることにはやはり限りがありますし、珈琲の世界をその時間でうわべだけかいつまんで伝えることは、残念ながら誤解が生じることがあっても一般の多くの方にはなかなか正しく伝わらないように思いました。
ただ今の時代、コーヒーが注目されることにおいては、マスメディアやSNSなどの簡単な情報機関は発信力があり伝達スピードも速いですね。手軽で簡単、便利な時代になってきましたが、その分、何か大切なものが失われてきたように思うのは私だけでしょうか?
「ゆずり葉の木」での珈琲講座
2月21日に瑞浪市の郊外のガーデンにて「珈琲と庭」というテーマでWORK SHOPを催しました。瑞浪市にある花屋「四季彩」さんが企画された3回講座の1回目です。
四季彩さんは30年以上瑞浪市内で花屋を経営されていて、センスの良い店創りで、花の質も良いと評判の店です。また、花を売るだけではなく、10年ほど前から郊外にガーデン(ゆずり葉の木)を所有して花木を育てています。花は生き物です。開花するまでに沢山の期間と労力と愛情をかけなければ育ちません。花を売るだけではなく育てることによって花とのかかわり方がより深く親密になると・・・。
販売業は商品を仕入れて売りその利ザヤで利益を出す商売ですし、製造業は商品を創り生みだす仕事になります。確かに一見すると随分違う業種のような気がしますが、そのどちらも存在し同一線上になければ成り立ちません。できる事なら製造販売を一貫して行うことが一番いいように思います。
珈琲店を例にとると、自家焙煎珈琲店は生豆(なままめ)から仕入れ自分で焙煎し、それを抽出して淹れ、自分の店で提供いたします。生豆の仕入れから焙煎、抽出、提供まで、すべての工程に責任を持つて行います。
では、焙煎をしていない珈琲屋や喫茶店はどうかというと、UCCなどのロースターから焙煎してある豆を仕入れますので、自店で出来ることは抽出し提供する工程だけです。要はどこまでを責任が持てるかという事だと思います。コーヒーの味はほとんどが豆と焙煎で決まります。
自分で良い豆を選び焙煎して「自分の味」を作り、その豆を使いCUPで提供しますが、その元となる焙煎という肝心なところを他人(ロースターやメーカー)に任せるのです。「自分が納得する珈琲を提供したい!」と思った時に、他人の焙煎した珈琲豆ではどうしても限界があります。
それがすべて良いと言っているわけではありません。自分がどう珈琲と向かい合いたいのか?という姿勢の問題なのです。しかし、自家焙煎の珈琲屋を40年近くやってきて、実はそれが長く珈琲屋を営む為の大きなポイントだと感じている今日この頃なのです。
1月に四季彩さんの宮地浩輔さんからお手紙を頂きました。そのお手紙の内容は、
「花を売るだけではなく、花によって何か暮らしの中で豊かになる付き合い方があるのではないか?今の時代、物やお金で心が満たされるという事よりも、暮らし方や時間の使い方から何かしら豊かさを感じる事が大切で、それが真に心を満たす事になるのでは?」と。
そして、「今井さんの41年の珈琲と向き合ってきた中で、暮らしを豊かにする珈琲との付き合い方を是非お話して欲しい」と頼まれました。
「私にはそんな人生を語るような恐れ多いことは出来ませんが、暮らしの中での珈琲との付き合いかたならば少しお話しできますし、それによって一人でも珈琲の好きな方が増えてくれればうれしいですので、何とかお受けさせていただきます。」とお返事いたしました。
「場所はどこで開催するのでしょうか?」
「瑞浪郊外にゆずり葉の木というガーデンを作りましたので、そちらでぜひお願いしたいです」、という事でした。
素晴らしいガーデン
そのガーデンは、四季彩さんの方々や宮地浩輔さんの「心の豊かさ」をテーマにした思いを10年の歳月をかけて具現化した場所で、自然を利用し、石畳や石積みをふんだんに配したテーマパークのようなガーデンでした。この場所から「心の豊かさ」を瑞浪に、日本に、はたまた世界に発信したいと考えているという事でした。
私はそのガーデンを訪れた時、そこにいるだけで心癒され素晴らしい時空を愉しめました。何故か、10年ほど前に人間模様を描いたテレビドラマ「風のガーデン(倉本聡脚本」」の庭風景を思い出しました。
これだけの空間を作るには、しっかりしたコンセプトと行動力がなければなりません。考えて思っているだけでは何も進みません。強い思いと、継続する力と根気を当たり前のように持って、何年もかけて一歩ずつ着実に作業して進まなければ完成しません。この地に立った時、このような様々な思いが瞬時に当然(自然)のことように感じられ、その思いと情熱と素晴らしい行動力に心から感動させられました。
「こういった若者が瑞浪を、いや日本を変えていくのだろうなぁ!」と。
そうして始まったのが「ワークショップ・・庭と珈琲」講座です。
第一回・・・2月21日(水)「珈琲のお話」
第二回・・・4月18日(水)「おいしい珈琲の淹れ方」
第三回・・・6月13日(水)「暮らしの中の珈琲」
の3回シリーズとして開催させていただくことになりました。
【場所】 ゆずり葉の木
【時間】AM10:00~12:00
【定員】約12名
【持ち物】コーヒーカップ2客、筆記用具
2ケ月おきに行う理由としては、ガーデンの風景が季節によって変わり、その移り変わりを観て感じながら珈琲と共にある時と空間を愉しむ時間にして欲しいという宮地さんの趣旨でした。
当日は温かく良い天気に恵まれました。定員満了の12名のお申し込みがありましたが、お一人がインフルエンザにかかって出られずに11名の方が受講されました。平日の午前開催にもかかわらず、若い方が多くお見えになったのに驚かされました。
始まりは、主催者の宮地浩輔さんからこの講座の趣旨のお話をされ、その後、バトンタッチしていよいよ講義です。
まずは珈琲とはどんなものなのかを知っていただくところから始めました。物(珈琲)を知るには、そのものの過去を知り、現在までの過程を探ることによって明日の未来が見えてくるのです。
よって私の珈琲講座は必ず歴史から始まります。歴史を知ると現在私たちが飲んでいる珈琲が分かります。そして、現在飲まれているいろいろなコーヒーを説明します。すると、これからどんな珈琲の世界に向かうのかが分かってきます。
一通りお話した後に、今ではとても貴重で手に入りにくい、コーヒーの果実の果肉を使って淹れる「ギシルコーヒー」を作って飲みました。珈琲のルーツとも言われ、今でもイエメンではよく飲まれています。その味は、私達が日ごろ飲んでいる種(豆)を焙煎した珈琲とは全く違ったスパイシーで漢方薬の葛根湯のような味の珈琲です。実際にも漢方薬の効果があるといわれています。
飲んだ人は一堂に、「え!?これが珈琲?」「フレーバーティーみたい」「葛根湯みたい」などなどとの声が聴かれましたが、まったく私たちが知っているコーヒーの味も香りもありませんが、コーヒー飲用はギシルから始まったのです!
ネルドリップで15杯分の珈琲を淹れる
手網焙煎
珈琲の歴史、生い立ちを理解していただいたうえで、いよいよ珈琲生豆に命を吹き込む「焙煎」をみんなで行いました。焙煎は珈琲の工程の中で一番といっていいくらいに大事な作業です。
コーヒーは嗜好品の飲み物といわれて、人それぞれ好みが違います。よって人によって美味しい珈琲は異なります。それぞれの人みんなが「美味しい!」と言って楽しむには、珈琲豆の焙煎をして焙煎によってどのように豆が変化して行くのかを観て知っていただくことがまずは一番なのです。
よって、焙煎工程を体験すれば自分の好みの焙煎濃度のコーヒー豆を探し出すことが出来るのです。焙煎濃度によって味がどう変わるかを知ることが、豆選びの基本なのです。また、豆の鮮度、賞味期間なども同時にわかります。珈琲の賞味期間はこの焙煎してからどれだけの期間なのか?です。
そうすれば、後はコーヒーミル(グラインダー)だけあれば、新鮮で健康に良い珈琲が飲むことが出来ますが、しかし、「美味しい珈琲を飲む!」となると、それだけでいいという訳には参りません。珈琲をいかにして美味しく淹れるのか?という一番の問題があります。その難問を紐解いていく事が次回から行う「コーヒーを美味しく淹れる」という「抽出編」となります。
美味しいコーヒーの淹れ方の基本を習い、自分のコーヒーを自分で淹れて飲みます。コーヒーを知り(知識)、美味しいを淹れ(抽出技術)、カッピング(味覚の判断)の三つを同時進行で実践して修得していきます。
お天気次第では、ガーデンでの「野点(のだて)珈琲」も行いたいと考えています。春真っ只中の緑の中で、木々や花々に囲まれて淹れて飲むコーヒーは格別でしょうね!
尚、2回目からの参加もお受け付けいたしますので、興味のある方はご一報くださいませ。
