イエメンのオークション豆
いつもありがとうございます。
色々と大変な世の中になっています。コロナは収まるどころか、いまだに感染拡大しています。飲食店は店主がコロナになると、10日間店を閉めなければなりませんので大変です。当店の教室を経て開店した生徒さんのお店も、店主が感染して10日間店を閉めたという店が数件あり、まさに死活問題となっています。
「人事を尽くして天命を待つ」
出来うる感染予防対策を全てして、営業するしかありませんよね。また、戦争は終結しないし、円高が進みすべてのものが値上がりしてきました。コーヒーも例外ではなく、生豆はすでに15%以上も上がっています。毎日楽しんで飲むものですので、当店はぎりぎりまで値上げすることなく頑張りますが、果たしていつまでもつのやら・・・・???
COEコーヒーのカッピング・・ワタル名古屋にて
さて、この7月から8月にかけて各国のCOE(カップ・オブ・エキセレンス)オークションのカッピングが、コーヒー生豆商社のワタル(株)名古屋支店で行われました。
COEオークションに関しては、以前の記事を参照ください。
COEコーヒーのオークション
メキシコCOE
グァテマラCOE
エルサルバドルCOE
ニカラグアCOE
コスタリカCOE
ホンジュラスCOE
エチオピアCOE
11月からはさらに・・・
コロンビアCOE
ブラジルCOE
ペルーCOE
エクアドルCOE
インドネシアCOE
と続きます。
私は、全てのカッピング会に行って、気に入った豆の入札に参加すると決めていましたが、なかなかスケジュールが合わずにすべてのカッピングに参加することが出来ませんでした。参加できなかったCOEコーヒーにおいては、ワタルさんのお気遣いで個別にサンプルを入札前にお送りいただきましたので、自分一人でカッピングして気に入ったコーヒーを選び、金額の上限を指定してオークションに入札しました。
COEコーヒーは、スペシャルコーヒーの中でもトップオブトップですので、スペシャルティコーヒーとは違い、とても数が少なく簡単に手に入れることはできません。分かりやすく言うと、COEコーヒーは、それぞれの国で賞を獲得した限られた逸品で、すべてのコーヒーの中の0.0001パーセントくらいしかない貴重で超優秀な豆なのです。
物によっては、240kgくらいしかないものもあり、それを世界中のバイヤーがオークションで競って、最高値を付けた人が買い取れるのです。豆によっては、びっくりするくらいの高値が付くことがあり、100g1万円くらいする豆などもあるのです。買えないと話だけで終わってしまいますので、私は思い切って入札価格を例年より2割ほど上げ、ワタルの担当者と綿密に話しあい、7品目の全てに入札しましたが、落札出来たのは4品目にとどまりました。それでも優良な4カ国の素晴らしいCOEコーヒーが買えましたので、11月の終わりに日本に入荷しますので、楽しみにしてください。
COEではありませんが、オークションはモカを産するコーヒーのルーツ国イエメンでも行われています。イエメンは、5年ほど前から内戦が勃発していて国情が安定していないので、日本では渡航危険レベル 4で「退避してください。渡航は止めてください(退避勧告)」の注意勧告が出ている国なのです。
その国でなんと!外資系(イギリス)の企業が、各地域の農園のコーヒー豆を集めてオークションを行っているのです。昨年はその中でも、今まで発見されなかった特異な味わいの豆が出品され、話題になりました。その豆をDNA鑑定にかけたところ、今までにはなかった全く新しい「母体品種」だという事が発見されました。これは何百年のコーヒー品種の歴史を根底から覆す可能性を秘めた発見でもあるのです。
もともとのコーヒーの品種は、アラビカ種とカネフォラ(ロブスタ)種、リベリカ種がありますが、私たちがレギュラーコーヒーとしてストレートや美味しさを求めて飲んでいる品種のほとんどはアラビカ種です。アラビカ種の母体品種と言われてきたのが、エチオピア原産のティピカ種です。
そのティピカ種のコーヒー樹が、対岸の国イエメンに植樹され栽培が広まり、各地でも栽培が広がり、イエメンの紅海に面したモカの港から世界にイエメンのコーヒーがコーヒー豆と共に飲用も栽培も広まっていきました。エチオピア原産なのに、アラビアのイエメンから世界に広まったことで、それにちなみ「アラビカ種」と言われているのです。
しかし、エチオピアの人たちは、「エチオピアが原産国なのにアラビカ種と命名するのは納得がいかない」といい、彼らはアラビカ種を「アビシニカ種」と独自に命名していました。私にとって呼び名はどちらでもいいのですが、何百年もの間その母体原種が、「ティピカ種」で、今ある品種改良されたハイブリッド種を含めたアラビカ種はすべて「ティピカ種」が母体品種といわれているのです。
しかし昨年、イエメンでティピカ種以外の母体品種(イエメニアと命名された)が発見されたことによって、世界のコーヒー事情が根底から変わってしまうのです。一般の方には、あまりピンとこないかもしれませんが、イエメンに4回、エチオピアに3回渡航して、博多の珈琲美美の今は亡き森光宗男さんと長きにわたり現地に出向き、モカのリサーチをしてきた私にとっては、天地がひっくり返るくらいの衝撃的な発見なのです。
その昔、モカの港から世界に広まったのはティピカ種ではなく、実はイエメニア種だったのではないか?何百年定説と言われ続けたティピカ母体品種説が、イエメニア母体品種説に覆るのですから・・・。
私は早速、新しい母体品種イエメニアの「バニーナヒミ」の豆を取り寄せて試飲しました。酸味とコクがバランスよく、味わい深く、どこかスパイシーさを感じる香味は素晴らしい味わいでした。なんと!イエメニアのバニーナヒミが、24年前に私と森光さんで発見して継続して輸入している「イブラヒム・モカ」によく似ていたのです。
イブラヒム・モカの10㎏袋
イブラヒム・モカとは・・・
私は1997年にリサーチの為に初めて訪れ、その後3年続けてイエメンに渡航して、イエメン国内の優良コーヒー産地をほとんど観てきました。その中でも、名産地といわれるマナハ近郊の、標高2300mのバニーイスマイリ山で収穫されている最優良コーヒー(イブラヒム・モカと命名)豆を探し出して、全国45店舗の自家焙煎珈琲店の仲間と「イブラヒム・モカの会」を立ち上げて、24年前から共同購入している豆です。実はそのイブラヒム・モカの豆が、昨年発見されたイエメニアの「バニーナヒミ」と酷似しているのです。
産地も近いとの事もあり、イブラヒム・モカはイエメニアではないかと感じています。
その真偽を確かめるために、私はワタルにDNA鑑定ができないかと聞いていますが、まだ返事が来ていません。もしその結果、イブラヒム・モカがイエメニアと認定されれば、24年前から世界に先駆けてイエメニアを扱っていたという事になり、モカコーヒーの歴史において輝かしい功績となるのではと思っています。
鑑定が実現して、結果が出るのを楽しみにしています。
オークションのNO1(イエメニア)
なかなか手に入らない今年のオークション豆「ベスト・オブ・イエメン」のサンプル生豆が手に入りました。超貴重な豆で、いろいろな産地の豆が選ばれていますが、そのほとんどが、新母体品種のイエメニアなのにはビックリしました。
こんなにものイエメンの豆が一堂に手に入ることはありませんし、昨年発見されたイエメニア種の豆が何十種類もサンプリングできることは、私にとってはまさに奇跡で、何十年もかけて調査研究してきたイエメンのモカコーヒーの新種の香味が発見できることにワクワクしています。
これからじっくり慎重にサンプルローストとカッピングをして、一つ一つ味を評価し、カッピングリストに記入していきたいと思います。またいつか結果をお知らせできると思います。
「コーヒーはモカに始まりモカに還る!」
味よりも量を重視した品種改良全盛時代において、今でも昔ながらの品種と製法を守っている味わい深い原種のコーヒーが今の時代でも味わえる唯一のコーヒー「イエメン・モカコーヒー」。生産性を重んじた今のプランテーションコーヒーの時代にあって、変わることなしに、昔ながらの原種の素朴で複雑な香味を、一人でも多くの方に感じ取っていただきたいと願っております!
コーヒーはモカに始まり・・・。
