ドリップコーヒーの淹れ方のポイント ドリップコーヒーの淹れ方のポイント
ドリップコーヒーの淹れ方のポイント

ドリップコーヒーの淹れ方のポイント

更新日:2022年7月29日
黒

ボーンズさんからご質問を頂きましたので、今回はそれにお答えします。

【質問】
いつも興味深いお話ありがとうございます。最近コーヒーを飲めない娘がコーヒーを淹れることにハマりました。購入している焙煎豆がとてもいいので、初心者の娘でも美味しく淹れてくれます。ときどきエグ味が出るので何故だろうと思っていましたら、3〜4人分でも1〜2人用のドリッパーを使っていました。ドリッパーが大きいと淹れにくいそうで、大きい方を使うとうまくできないようです。ご教授いただけましたらと・・よろしくお願いします。

【返答】

ボーンズさん!ご質問ありがとうございます。
ご自身はコーヒーが飲めないのに、ドリップコーヒー抽出に興味を持ってくれるとは・・、娘さんは飲めなくても、コーヒーを淹れる喜びや、それ以外の楽しみを見つけたのでしょうね。とてもいい娘さんですね! 淹れたコーヒーのカッピングはお母様がしているのでしょうか?(笑)

ホームコーヒーでは、美味しいコーヒーを淹れて飲むのが最終的な楽しみですが、「豆を選ぶ」、「豆を挽く」、「淹れる」という楽しみ方もあります。コーヒーは飲む楽しみと同じくらい1杯のコーヒーにするまでにたくさんの楽しみがあるのです。

一つ目は「2種類の香り」です。

豆を挽くときに薫る「フレイグランス」、抽出するときに香る「アロマ」と、2種類の香りが楽しめます。アロマは飲む時にカップを近づけた時にも強く感じられますね。香りにはもう一つ、コーヒーを飲み込んだ時に鼻孔に広がる「フレーバー」があります。フレーバーは「香味」といって、香りでありながら「味」としてとらえられています。試しに、鼻をつまんだままでコーヒーをゴクリと飲んでみてください。何か一味足りないコーヒーになります。

フレーバーは香りでありながら味わいとしての重要な要素なのです。コーヒー焙煎豆に含まれる香りの成分は、500種類以上といわれていて、その馥郁たる香りはいろいろな飲み物の中でも、他に類をみない魅力的な芳香を醸し出します。また、気分を落ち着かせリラックスさせるアロマテラピーの効果や、心筋梗塞を予防する効果があるという研究報告もあります。コーヒーは苦いから嫌い!という方は時々お会いしますが、コーヒーの香りは嫌い!という方に、私はいまだにお会いしたことがありません。

ペーパー・ドリップ

ペーパー・ドリップ

他には、「コーヒーを淹れる」というクリエイティブな楽しみがあります。コーヒーは抽出条件や淹れ方によって味わいが違いますので、コーヒーの基本を理解して抽出技術を身に付けると、いろいろなコーヒーが淹れられるという唯一で最大の楽しみ方があります。

日本人はブラックでコーヒーを「美味しい!」と言っている方がとても多く、世界で一番繊細で優秀な味覚を持った国民といわれています。よって私は「ブラックコーヒー」を「ジャパニーズコーヒー」と命名しています。

コーヒーはどんな焙煎濃度のコーヒーでも基本「苦味」が特徴です。日本人は、苦味の中に、甘味や酸味、コクや旨味などを感じることができる優秀な味覚を持っています。
苦味を「美味しい!」と感じるのは大人だけの味覚で、幼児や子供はその苦味を美味しいとはならないようですので、コーヒーは「大人の飲み物」と言われています。コーヒーの苦味が美味しいと感じたら、それはもう大人になった証し?と考えてもいいかもしれませんね(笑)

娘さんももう少ししたらブラックでコーヒーを飲むようになるのではないですか?是非、こだわりの名バリスタとなってほしいですね(笑)

ブラックコーヒーは、何も入れずにそのままで美味しくなくてはなりません。雑味がなく綺麗で、酸味、甘味、苦味のバランス良いコーヒーが味の決め手となりますので、生豆、焙煎、抽出法など、その過程のすべてに気を使わなければなりません。

よって、われわれ日本人の焙煎技術、抽出技術は世界一だと確信していますし、味覚も世界で一番だと思っています。抽出においても、雑味を出さずにコーヒーの旨味成分だけを贅沢に淹れる方法は、何といってもネル(布)やペーパーを使った「ドリップ抽出法」です。世界でもネルやペーパー・ドリップ抽出法がこれほど広まっている国は日本だけです。まさしくドリップ抽出法は「ジャパニーズ抽出法」といってもいいくらいですね。

布

さて本題に戻りますが、娘さんがペーパー・ドリップで美味しいコーヒーが淹れられるようになったとの事ですが、1回に1杯か2杯淹れるときは良い味になるのですが、3杯や4杯など、淹れる杯数を増やすと苦味が強くでたり、エグミ(渋み?)がでたり、味わいが違ってしまうので何が原因か教えてほしいとのご質問です。

まず美味しいカップコーヒーを作るには、良質な豆、良質な焙煎、良質な抽出が条件となりますが、私はその中でも最後の「抽出(淹れる)」が最も大切で重要だと思っています。「終わりよければ総て良し!」ではないですが、最後の抽出が悪ければすべてが台無しになってしまいます。抽出は一般的に、コーヒーの味作りに於いて唯一自分ができる作業なのです。多くの方が経験していることと思いますが、淹れ方によって良い味になったり雑味が出たりと、様々な味になりますね。

ボーンズさんの娘さんは近くの良い珈琲店で良質な豆を購入しているという事ですので、やはり抽出が問題なのでしょう!

実は、ドリップ抽出法は「基本」さえ覚えてしまえばとても簡単です。25年以上珈琲教室を開催していますが、基本を知らずに淹れている方がとても多いです。特に、ドリップ抽出は「基本」を知っていないと、何年たっても美味しいコーヒーが淹れられません。よって当店の珈琲教室は、どんなベテランの方でも必ず「基本編」から始めていただきます。

コーヒーは「飲み物」ですので、本やネットでどれだけ知識だけ詰めても理屈っぽくなるだけで(笑)、美味しいコーヒーを淹れられるようにはなりません。「知識と技術(淹れる)とカッピング力」を三位一体で同時に学習しないと習得できません。特にカッピング力はとても大切です。どれだけ良いコーヒーを淹れてもそれが良いかどうかを判断できるカッピング力がなければ何もなりません。

まずは基本を習得していただきたいですが、カッピングも含めて文章で説明できる程簡単ではないですので、実際に娘さんに目の前で淹れて頂き、基本とポイントをお教えするか、または珈琲教室に通っていただくのがいいのですが・・・そうもいかないようなので、この場を借りて、ドリップの基本を少しだけお話ししますので参考にしてみてください。

ボーンズさんの娘さんは、1~2人前の抽出は美味しく淹れられるようですが、その2人用のドリッパー(器具)で4杯を淹れると雑味が多く出てしまうという事ですので、まずは4杯を淹れるときには、やはり4杯用のドリッパー(器具)を使用して慣れていただくことだと思います。

一番の原因として考えられるのは、時間がかかり過ぎるという事です。ドリップの抽出時間は基本3分以内で終えるのが適正です。それを大きく超えてしまうと、雑味が多く出てしまい、エグミや嫌な苦味や酸味が出てしまいます。よって4人用の場合は、2人用よりも注ぐお湯を太くして量を多く注ぎ、抽出時間を2杯用となるべく同じ時間で淹れられるようにすると、安定して2杯の時と同じ味わいのコーヒーが淹れられると思います。ただ、器具が大きくなったとしても、やはり全く同じ抽出時間でという訳にはいきませんので、2杯のときより少し低めのお湯を使えば3分を超えても雑味が抑えられますよ。

下記の【杯数によっての基本的条件】を参考にして、「使用量」、「注ぐ湯の温度」、「抽出時間」などの条件をそれぞれ変えて淹れてみてください。自分に合った美味しいコーヒーの淹れ方が必ず見つかると思いますよ。

1回では習得できませんが何回、何十回、何百回もかけて繰り返し繰り返し淹れて、その都度、カッピングして味覚を磨きながら少しずつ抽出技術を習得していってください。初めは淹れるたびに味わいが違うでしょうが、それはそれで「色々な味わいのコーヒーが味わえる!」と割り切ってすべてを楽しんでください!!

【杯数による基本的条件の基本】

 ~ハイローストの場合(粉の量はお好みで変えてください 

◎人数分  粉の量   エキス抽出量   時間    最適湯温       
1人分  13g  120~150cc     2分~2分30秒前後   (湯温85度)
2人分   22g   240~300cc   2分30秒~3分前後  (湯温84度)
3人分   30g  360~390cc    3分~3分30秒前後   (湯温83度)
4人分   38g  480~510cc     3分30秒~4分前後   (湯温82度)

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