フランスとイタリアの陶磁器 フランスとイタリアの陶磁器
フランスとイタリアの陶磁器

フランスとイタリアの陶磁器

更新日:2021年8月11日
白いカップ

フランス・アビランド社のデミタスカップ

カップ5

フランス・ジョルジョ・ボワイエ社のカップ

① 「リモージュ」      

 ※一部Wikipedia参照
18世紀後半の1771年、フランスの有名な磁器産地リモージュ地方で良質なカオリンを発見して最初に硬磁器が作成されました。その後、リモージュ磁器の白さを発展させ、19世紀後半は「リモージュ磁器の黄金時代」となりました。

1842年にニューヨークからダビド・アビランド (David Haviland)がリモージュを訪れ、数年の滞在期間中に幾つものサンプルをニューヨークの親族に送り、リモージュ磁器をアメリカに紹介しました。これが後のアメリカへの「膨大な」輸出への呼び水となり、販路は大いに拡大することになります。アビランドは1862年に2人の息子とともに「アビランド製陶所」も設立し、リモージュの国際的な評価アップにさらに貢献しました。「アビランド製陶所」を先駆けとして、このころにヨーロッパに広まっていたジャポニズムもリモージュ磁器に取り入れられました。

1851年にロンドンにおいて開催された最初の国際万国博覧会にも、多くの窯が作品を出品し、好評を得ました。なお、この頃から多くの製陶所が製品に窯印をつけるようになりました。この博覧会で良いカオリンを持っていた「プイヤ製陶所」の出品作品は、極めて美しく質の高い白の傑作と評されました。

この時期には、釉薬を使わない素焼きの作品も作られました。絵付けの方法として、素焼きに絵付けをして焼くのではなく、白い生地に絵付けしてからさらに焼き付けるという技法は、この時期に開発されました。

アール・ヌーヴォーも、この技法を19世紀後半にいち早く取り入れ、高く評価されました。その後、アール・デコが流行すると、これもまたすぐに取り入れられました。現在では、リモージュこそがフランス磁器の中心地といわれ、パリのレストランではリモージュ磁器の食器が多く使われています。

青い

フランス・セーヴルのコーヒーカップ

② 「セーヴル」 

            
セーヴル焼は、フランスのセーヴルで生産される磁器です。
1700年代、国を挙げてマイセンに見習って自国の高級陶磁器を製作するところから始まります。1738年、パリ東端ヴァンセンヌ城内に窯を構えました。1756年、ヴァンセンヌ窯はベルヴュー城にほど近い、パリとヴェルサイユ宮殿の中間に位置するセーヴルへ移転。1759年、「王立セーブル製陶所」が誕生し、ヨーロッパでは権威的な存在となります。

セーブル陶器を代表する色といえばやはりブルーです。
「ブリュ・ド・ロワ、クラウデッド・ブルー」、「ファット・ブルー」、「アガサ・ブルー」などの色があります。

また、それらを彩る金彩には1000種類に及ぶ文様があり、転写の後に金彩職人が上塗りを施し、さらに焼成後、瑪瑙職人が磨き上げて完成します。1789年のフランス革命でセーブル窯は破壊されますが、1804年、ナポレオン1世により「国立セーブル製陶所」として再興されます。

その後1876年、サン・クルー公園に隣接した広大な敷地に「国立セーブル陶磁器製作所」が建てられ、現在に至ります。現在、生産量は年間約6000ピースに限定され、ほとんどがフランス国家のオフィシャルギフトとして作られ、一般にはなかなか流通しません。また、コーヒーカップ一客が数十万円もしますので、「幻の窯」とも呼ばれているそうです。

③ 「フランスの名窯」

☆ ロワイヤルリモージュ
☆ アビランド
☆ ジョルジュ・ボワイエ
☆ その他、アピルコ、カンペール(アンリオ・カンペール)、ジアン、ベルナルド (Bernardaud)、レイノー、ジャメ・セニョール、ジュヌビエーヴ・レチュ、オーバンマリー、ヴァロリス、フィリップ・デズリエなどがありますが、日本ではなかなか手に入らない。

ルクルーゼ

ルクルーゼ社のカフェ・オ・レ・ボウル(左)

④ カフェ・オ・レ・ボウル

フランスといえば、カフェ・オ・レ(ミルクコーヒー)ですね。
日本では取っ手がついていない、カフェ・オ・レを飲むカップをカフェ・オ・レ・ボウルと呼んでいますが、本場のフランスではただ単にBolと呼ばれています。ヨーロッパでコーヒーが飲まれだしたのが1800年代で、中流家庭では一般的になりましたが、まだまだ庶民には高嶺の花。人々が朝食にがぶがぶ飲めるぐらい一般的になるのは、1920年代ぐらいからになります。

このころから今の大きさのカフェ・オ・レ・ボウルが盛んに作られるようになりましたが、今では主に朝食用に使われるボウル(おわん)を言うようで、コーヒーを飲むためというより、コーンフレークを食べるために活躍している場合が多いようです。カフェ・オ・レ・ボウルは収集家のコレクターアイテム商品として人気があり、アンティークのカフェ・オ・レ・ボウルなどは数十万円するものまであるくらいです。

ブラジル

ブラジルで購入した、19世紀のアンティーク・セーヴル絵皿

【寸評】
フランスも歴史のある名窯が多くあります。
私は、アビランドのデミタスカップとロワイヤル・リモージュ、ジョルジョ・ボワイエのカップを古くから所有しています。質的にはとても良いのですが、ソーサ(皿)が浅くて持ちにくく、お客様にお出しするには少し難がありますので、ほとんどお店で使うことがありません。また、セーヴルのカップは高価すぎて手に入れる機会がなくて持っていません。

しかし、2000年にブラジルに珈琲視察に行ったときに19世紀のオールドセーブルの飾り皿をサンパウロの高級アンティークショップで購入しました。その時は、本物かどうか確証がなくわかりませんでしたが、皿の後ろの裏印がどことなく見たことがあり、10万円近くしましたが、旅の思い出として思い切って購入してきました。帰ってから資料などを調べたら本物だという事が分かり、それも40万円ほどで売り買いされていることが分かり「ヤッタ!」と喜んだものです。

私は、数十回ほど海外に珈琲視察の旅に出かけていますが、行った時に、珈琲関係のものや珍しいものなど、いろいろ購入してきますが、買うかどうか迷ったときには自分に言い聞かせていることがあります。

「買わずに後悔するより、買って後悔する」

よって、迷ったらまず買います!後で買っておけばよかったと後悔しても遅いですが、買っておけば、たとえそれが偽物だとしても、いい経験になりますし、また、それはそれで思い出となります。また、本物ならば旅の貴重な良い買い物として残ります。

いずれにしても買ってこなければ何も残りません。イエメンに初めて行ったときに「琥珀」をたくさん購入してきましたが、すべて偽物のプラスチック製でした(笑)でも、次の年に行った時には、すべて本物の、それもとても貴重な琥珀を購入することが出来ました。

皆さんも海外旅行に行かれましたら、自分の経験と感性を信じて買い物をしてください。

フルーツ

イタリア・ジノリ社のイタリアンフルーツのカップ

「イタリアの陶磁器」

(ア)トニャーナ
1775年トニャーナファミリーにより創業。創業時は煉瓦工場として設立し、1946年にテーブルウェアメーカーへと転向。現在では、イタリア最大の陶磁器メーカーとなり、業務用食器を数多く生産しています。これらの食器は、理想の厚みや重さ、種類の豊富さ、さらにお求めやすいプライスで、イタリア全土はもとより、世界中のカフェやレストランから愛されています

(イ) リチャードジノリ
1735年にトスカーナ大公国のカルロ・ジノリ侯爵 (it:Carlo Ginori) が自領であるドッチア(フィレンツェ県、セスト・フィオレンティーノの一部)に磁器窯を開き創業。当時、マヨリカ陶器全盛のイタリアにおいて、マイセンやウィーン窯に対抗すべく、鉱物学に造詣が深かったジノリ侯爵は、自ら原料土を捜したり、ペーストの生成や発色等の磁器の研究を行い、イタリア初の白磁を完成させた。開窯当初は、マイセンのような豪華で精緻な芸術作品に力が注がれていた。

1896年、ミラノのリチャード製陶社と合併して、現在のリチャードジノリとなる。1956年、ラヴェーノのイタリア陶磁器会社と合併し、イタリア最大の陶磁器メーカーとなった。ジノリ最古の代表作である「ベッキオホワイト」は不変の定番として親しまれている。

また、1760年頃にトスカーナのとある貴族の為に造られた「イタリアンフルーツ」は、現在でも新鮮さに満ちあふれ、不朽の名作として愛されています。その後、販売不振に陥り、2012年7月には陶磁器の製造を中止。 2013年1月7日、イタリアのフィレンツェ裁判所は、リチャードジノリに対して破産宣言を勧告しました。2013年4月5日、グッチがリチャードジノリに対して、1300万ユーロ(約16億円)で買収して再建することが決まり、現在に至っています。現在のリチャードジノリはグッチの傘下で生き残っていて、日本向けの品物は作り続けています。

【寸評】
イタリアの名窯リチャードジノリは歴史があり、オールド・ジノリなどは、アンティークな陶器を収集して楽しむコレクターアイテムとなっています。生地は白く質もよいです。しかし、なんといってもデザインが素晴らしく、何百年も作られ続けているカップのデザインは、現代においても飽きることなく楽しめます。特にイタリアンフルーツはデザイン、色、形が素晴らしく、上品でいつまでも楽しめるカップです。

私は他に、ミュージオクラシコの大小のカップとポットを持っていて、独特な形状でオーソドックスな形ではありませんが、実際に使用すると使い易くてとても良いカップです。若い方たち?には、イタリアンデザインのジノリのカップを楽しんでいただきたいですね!

・・・次回は、ロイヤルコペンハーゲンを代表とするデンマークのカップをご紹介いたします。

ポット6

イタリア・ミュージオクラシコの大小のカップとポット

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