良いコーヒーと悪いコーヒー 良いコーヒーと悪いコーヒー
良いコーヒーと悪いコーヒー

良いコーヒーと悪いコーヒー

更新日:2021年3月3日

いつもありがとうございます。
新型コロナウイルスが収まるどころか、世界の感染者が1億人を超え、世界中がおかしくなってきました。ひとまず認証されたワクチン接種に頼るしかありませんが、副作用の危険もあり、また、新型コロナウイルスの変異種も各国で感染拡大していますので、ワクチン接種すれば「大丈夫!」というわけにはいかないようです。一体どこに収まるのでしょうか?

私たちのできることは、政府の方針に従い常に衛生管理をしっかりするなど、できる範囲でできることをして、まずは自分が感染しないことですよね。

最近は、自宅でコーヒーを淹れて楽しむ方が増えてきました。珈琲屋としては珈琲豆が売れるのはうれしいことですが、そのぶんカフェに来るお客様が減ってきていますので、素直に喜ぶことはできません。

コーヒーは健康に良い飲み物です

深煎り

深煎りコーヒーにニコチン酸が多く含まれる!

近年、コーヒーの薬用効果がたくさん研究され発表されています。直近の研究では、岡希太郎(東京薬科大学名誉教授)先生の、「深煎りコーヒーに多く含まれるニコチン酸アミドが、健康で元気な体作りに良い!」という発表がありました。
岡先生は、数年前に2回、待夢珈琲店で「珈琲と健康」の講座をしていただいた方で、「珈琲と健康」の本を何冊もお出しになっている日本でのコーヒー研究の第一人者です。

焙煎が浅いコーヒーの薬用効果のクロロゲン酸によるポリフェノール効果(美肌効果、活性酸素の除去)は以前から知られていることですが、最近は、焙煎が深いコーヒーのニコチン酸による薬用効果(抗酸化作用)に着眼し、広めています。

深煎りコーヒーの健康効果

「深煎りのコーヒーには、もともとの生豆に多く含まれる「トリゴネリン」という認知症予防の物質が、「ニコチン酸(ナイアシン)」に変化し、現れてきます。ニコチン酸はクロロゲン酸とは逆に、浅煎りのコーヒーにはほとんど含まれないのです。

ニコチン酸は血液をサラサラにして血行を良くします。また、抗酸化作用(アンチエイジング)があり、いつまでも若さを保ち、健康な体を維持するといわれています。これが多く含まれる食品は、キノコ類と豆類とコーヒーくらいです(コーヒーは毎日何杯も飲める)。

岡先生が今最も注目して研究しているのが、ビタミンB3のひとつであるニコチン酸。キノコやピーナツ類の含有成分として知られ、「深煎りのコーヒー」に多く含まれ、様々なコーヒーの成分のうちで唯一のビタミンで、タバコのニコチンとは異なる物質です。

岡先生は、このニコチン酸の健康寿命の延長効果を研究して、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(細胞内のミトコンドリアの中にある補酵素で通称NADと呼ぶ酸化還元反応に関与する重要な物質)が細胞にできた傷の修復を促すほか、「人間が生きていくうえで一番大事なエネルギー」であることをつきとめました。「人間のエネルギーは、ミトコンドリア内の様々な代謝酵素が栄養素を分解して、この代謝酵素がNADと結合することによって酵素活性するのです」。NADは加齢とともに減少し、これが老化関連疾患の原因の1つといわれていて、ニコチン酸を体内に取り込むことによって老化による疾患を予防するのです。

深煎りのコーヒー豆10グラム中には、ニコチン酸が3〜5ミリグラム含まれ、1日に3、4杯飲めば、NAD不足にならないだけの量のニコチン酸を摂取できるのです。

・・・・・・深煎りコーヒーを今一度見直してみませんか?

サイフォン

さて先回、ボーンズ さんからご質問をいただきました。

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~こんにちは いつも読ませていただいております 私もコーヒーが大好きです 近くにとても質の良い自家焙煎のお店があるので、豆もそのお店で購入し家カフェを楽しんでいます。今はほとんど飲むことがありませんが、食事のコースにコーヒーがついていたりした時サイフォンで淹れたコーヒーを飲むと結構な確率でお腹が痛くなってしまいます 相性が悪いのか何か悪い物質が出ているのか気になってしまいました。サイフォンで淹れたコーヒーは体にいいのでしょうか?~
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最近はどこの街にも数件の自家焙煎の珈琲店があり、新鮮で良質な豆を手軽に買うことができますね。また、ネット通販により全国から新鮮で良質な好みの豆をお取り寄せする事も手軽になり、家庭でコーヒーを楽しむ人にはとてもいい時代となりました。

さて、食事のコース料理の〆のサイフォンで淹れたコーヒーを飲むとかなりの確率で気持ち悪くなるとのお話ですが、そのコーヒーを実際に私が飲んだわけではありませんので、簡単にお答えすることはできません。珈琲屋の立場で言わせていただくなら、サイフォンで淹れるコーヒーだから悪いわけではないと思うのですが・・・・??

サイフォンコーヒーは昔からある抽出器で、1800年代初めにイギリスで発明された器具です。確かに近年その使用率はずいぶん少なくなってきましたが、今でも街には必ずサイフォンを使ったコーヒー専門店がありますので、悪いコーヒーという訳ではないと思います。考えられるとしたら、その店の使用している豆が古いか、サイフォンでの高温抽出による雑味が原因なのかもしれません。

実は私が初めてレギュラーコーヒーを自宅で淹れて飲んだのが、高校時代に兄が買ってきたアルコールランプが熱源のサイフォンでした。なにか化学の実験のようで、見るからにワクワクする不思議な世界でした。香りが部屋中に広がり出来上がるコーヒーがとても楽しみでした。しかし、いざ出来上がったコーヒーを飲むと、苦みと雑味だらけのエキスで、とても「おいしい!」というコーヒーにはなりませんでした。

これはひょっとして「豆が悪いのではないか?」と思い、街で有名な喫茶店で豆を分けてもらって淹れてみたのですが、結果はそれほどの違いはありませんでした。懲りずに何度も何日も繰り返し淹れてみたのですが、なかなか良い結果とはならず、一度も満足できるコーヒーが淹れられず、そのうち洗っているときに割ってしまいそのままお蔵入りとなってしまいました。その時にサイフォン抽出の難しさを知りました。

サイフォンは淹れ方がむずかしく、下から200℃以上の熱風が加わるので、抽出温度が高温になりやすく温度管理に神経を使わなければなりません。私が使っていたアルコールランプの熱源方式では温度管理が特に難しく高温になってしまうので雑味が出やすく、それでは何度やっても美味しいコーヒーを淹れることができなかったのです。

その後、数年して、「簡単、便利、美味しい」がキャッチフレーズのぺーパードリップが出現し、家庭の抽出器として爆発的な人気となりサイフォンにとって代わりました。ペーパードリップはサイフォンとは違い、抽出中に余分な熱を加えないので抽出温度が高くならず、お湯の温度管理が容易なので雑味の少ないクリーンな味わいのコーヒーが安定してできるのです。よってブラックコーヒーを好む日本人に受けいれられたのでしょう!

トルコ

トルココーヒーポットとジャズべ(浸漬式抽出器)

ふくらむ

ペーパドリップ(透過式抽出器)

ではこの二つの抽出器はいったい何がどう違うのでしょうか?
コーヒーの抽出法は基本的に2方式に分かれます。

2つの抽出法

①透過式(ドリップ)

コーヒーの粉を布か紙のフィルターに入れて上からお湯または水を注ぎ入れ、エキスを抽出する方法。お湯またはお水以外の熱は加えずに抽出するので、雑味成分が出にくく、クリーンでおいしい香味成分だけを贅沢に抽出する方法(布ドリップ、ペーパー・ドリップ)

②浸漬式(ボイルド)

お湯の中にコーヒーの粉を浸し漬け香味成分(雑味も含めて)を抽出する方法。コーヒーブレス以外は、コーヒーが大変貴重な時代に、いかにして少量のコーヒー粉でたくさんのエキスを出すかを目的に発明された器具がほとんどですので、高い熱で時間をかけてオイル分をたくさん抽出する方法なので、少量の粉で強く濃いエキスが抽出されますがその分雑味成分も多く出てしまいます。

ブラックコーヒーというよりは、ミルクや砂糖、香辛料などを入れ、雑味を消して飲むコーヒーと言えるのかもしれません(サイフォンコーヒー、ターキッシュ・コーヒー、パーコレーター、コーヒーブレスなど)。日本人は世界でも珍しくブラックでコーヒーを好んで飲む国民ですので、喫茶店、珈琲店など、ほとんどの店はドリップで淹れていますし、今流行りのコンビニ100円コーヒーもドリップコーヒーです。

サイフォンコーヒーでも雑味を出さずにクリーンなコーヒーを淹れている珈琲店はたくさんありますが、抽出効率だけを求めて、雑味を気にせずに高温の熱風を何分も加え続けて淹れている店のコーヒーは、体に負担をきたすコーヒーになるかもしれません。淹れ方によって、「同じ豆を使ったの?」と疑うくらい違った味わいになります。これはドリップ式だけではなくサイフォン抽出でもいえることです。また、コーヒーは同じ量、同じ豆を使っても、淹れる器具によって全く違った味わいのコーヒーになるのが面白いところでもありますし、難しいところでもあります。

コーヒーは「嗜好品」の飲み物ですので、どれが良いかは個人の好みの問題ですが、焙煎不良の豆や古い豆を使って淹れたコーヒーではどんな方式で誰が淹れても良質なコーヒーとはならず、体に負担をきたすコーヒーとなります。これは「嗜好品」とは別次元の問題ですので、こういったコーヒーは、「良いコーヒー」ではなく、「悪いコーヒー」と言わざるを得ません。

飲むと気持ち悪くなる店のコーヒーについては、淹れ方と豆の問題の二つの原因があると私は考えます。よって、一概に「サイフォンだから・・・」とは決めつけられません。
ご質問頂いたボーンズさんは、味覚にとても敏感で、繊細な方なのでしょう。胃の弱い方や繊細な方は少しでも古い豆で淹れたコーヒーや、淹れてから時間がたったコーヒー、雑味が多く出ているコーヒー、エキスの強く出過ぎたコーヒーなどを一杯飲んだだけでも、気持ち悪くなる方がいます。しかし、胃の丈夫な方には全く影響がないので、そういったコーヒーがなかなか問題とならないのでしょうね。
今回は、「サイフォンコーヒーを飲むとかなりの確率で・・」ということでしたので、ボーンズさんは高温抽出で出やすい雑味に対してとても敏感な方なのかもしれませんね。今後はドリップコーヒーの良質な店を選ぶといいかもしれませんね(笑)

私がお勧めするのは、好みの良質な豆を買ってきて、新鮮なうちに自分で挽いて淹れて飲むのが一番です。今、美味しいコーヒーは自分で淹れて楽しむ時代なのです!すでにボーンズさんはそれを実践しているのですから素晴らしいです!そういった方がもっと増えると珈琲屋としてはとても嬉しいですね!

大まかなご返答になってしましましたが、こんな返答しかできなくて申し訳ございませんが、コーヒーは味覚、臭覚、触感、雰囲気、その時の気分で味わいますので、実際にその店でそのコーヒーを飲んでいないので、正確なお答えができないことをご理解くださいませ。しかし、これとは少し違ったケースですが、高級ホテルや高級レストランなどのコースで出てくる最後のコーヒーについて、私なりに経験したことを簡単にお話しましょう。

私は、何十年も前から、高級ホテルや高級レストランなどでコース料理を頂き、最後の〆にコーヒーを飲んできましたが、そのコーヒーの不味さにいつも閉口させられっぱなしでした。何年にもわたりいろいろなお店に行きましたが、あまりにもそういった店が多く、最近では初めからあきらめてなるべく紅茶を頼むようにしています。

毎年行く、上高地の某有名ホテルなども例外ではなく、宿泊時には自分でネルドリッパーとコーヒー豆を持参して部屋で淹れて飲むくらいです(笑)。料理は素晴らしいのに、いざコーヒーとなるととても上質なコーヒーとはいいがたいものが提供されるのです。理由ははっきりとはわかりませんが、いずれにしてもコーヒーにはあまり気を使っていないということでしょうね。

欧米においてはコーヒーにはミルクと砂糖を入れるのが当たり前で、食べ物の付録のようなものですので、ホテルやレストランなどは欧米スタイルですので、ある意味欧米的なのかもしれませんが・・・(笑)

日本では近年、家庭で手軽に上質でおいしいコーヒーを自分で淹れて飲めるようになりました。また、コンビニやファーストフードなど、どこでも手軽に新鮮で美味しレギュラーコーヒーが飲める時代となりました。ホテルやレストランのコーヒーだけが何か時代に取り残されているような気がしてなりません。

しかし、そういった時代は終焉して、これからは価格に見合った上質でおいしいコーヒーが提供される時が来ると思いますし、そうなるよう願っております。

PS. 今回は私の経験からくる個人的意見ですので、決してサイフォンコーヒーを否定している訳ではありませんし、全国の高級ホテルや高級レストランのコーヒーを否定している訳ではありませんので、くれぐれも誤解なきようにお願いいたします。

高級ホテルのコーヒーについては、コーヒーハンターの川島良彰さんが2015年に、これに近いことを書いた本「コンビニコーヒーは何故高級ホテルより美味いのか」を出版していますので、ご興味のある方は是非お読みいただきたいと思います。

小海盆

ポプラ新書川島良彰 著

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