明けましておめでとうございます。いつもお読みいただきありがとうございます。
全世界の人の生活が一変した昨年は、歴史的に見ても大変な年だったように思います。改めて「生きる!」には何が必要でどうあるべきかを問われた時となりました。それはそれで貴重なことだった!と、いえる日が早く来ることを祈っていますが・・・、なんだかしばらく来そうにない今日この頃の情勢ですね。
年末年始は例年になく豆の全国発送のご注文が多くあり、自宅でコーヒーを淹れて飲む方が増えたように感じました。家庭でコーヒーを淹れて楽しむことは、心落ち着く癒しの一時(生活)だと思います。この機会に多くの方に家庭でコーヒーを楽しんでいただきたいですね!
さて、コーヒーは鮮度が一番大事だとは、常々申し上げていることですが、焙煎後すぐに飲むことが一番とは限りません。実は、焙煎直後のコーヒーは淹れて飲んでも香味が乏しくそれほど美味しくはありません。最低でも1~2日くらい時間をおいて、余分な炭酸ガスを抜いてからのほうが、その豆の持つ良さ(特徴)が良く表れるのです。豆の種類によっても、焙煎濃度によっても違いますが、経過とともに香味が変わって行き、その変化を楽しむことも豆で購入して自分で挽いて抽出する楽しみの一つでもあります。
今回は、この焙煎後の経過時間によって豆の香味がどのように変わっていく(経時変化)か、を知っていただきます。
コーヒーの賞味期間は?
飲み頃は?
いつからが酸化?
など、豆の経時変化を知ると、自分の好みの香味をより的確に楽しむことができますよ。
【コーヒー豆の経時変化】
①豆の賞味期間(酸化)
a.豆の賞味期間は20~25日
b.粉の賞味期間は約2時間
c.エキスの賞味期間は約20分
と一般的には言われています。
②酸化とは?
焙煎されたコーヒーは、豆のままで販売される場合と粉砕された状態で販売される場合がありますが、いずれにしても空気に触れ化学変化を起こし、過酸化脂質なる物質が現れ、品質が低下して、香りが失われ、味も変化して、体に負担のあるコーヒーとなります。これを「酸化」といいます。
コーヒー豆は、生鮮食品で乾物ではありません。コーヒーは、ロースト(焙煎)直後から酸化が始まり、コーヒーの香味の変化が起こってきます。ただし、コーヒーは、『腐って飲めない』という明らかな症状が表れないために、乾物のような誤解を受けやすいようです。賞味期限は、あくまでもコーヒー本来の香味が充分にあり、それぞれのコーヒー豆が本来持つ特徴や果実であるコーヒーのフルーティーな酸味などの味が保つ期間をいいます。
賞味期間は、豆のままでの保存か粉での保存、豆の種類やロースト(焙煎)度合い、保存環境などにより、期間に大きな違いがありますが、時間が経つに連れて、全てのコーヒーに香味の変化、酸化がおきます。
通常、豆の状態で、ロースト(焙煎)直後1~2日は、炭酸ガスを特に多く排出するので味が安定しません。味のピークは、ロースト(焙煎)後、3~10日(保存によって違う)くらいと言われていて、その間は新鮮な味が楽しめます。そして、次第に酸化が進み、コーヒーの香味の質が変化していきます。その後、賞味期間が過ぎると、酸化となり、大げさに言うと、腐った状態になります。コーヒーは生鮮食品とお考えいただくとわかりやすいと思います。酸化が進み、特に顕著に現れるのが、コーヒー本来の「爽やかな酸味」から、「スッパ味」に変化し、過酸化脂質が多くでて、重く胃にもたれるコーヒーになることです。
多くの日本人が拒否反応を起こしている「酸味のコーヒー」というのは、この酸化した「スッパ味」です。「スッパ味」は体に悪いので、人間が本来持っているか、体を守る本能で、それを「まずい!」といって拒否するのです。新鮮な「酸味」と古くなった「スッパ味」の違いをご理解ください。香りは、本来の、心落ち着く、香ばしい爽やかでフルーティーな香りではなく、「ツーン」とした、鼻を突く嫌な香りに変化していきます。
③経時変化とは?
前章で説明したように、コーヒーは時間とともに酸化していきます。コーヒーは豆のまま、常温で普通に保存すると、25日(夏はもっと早い)くらいで、どんな豆も酸化してしまいます。酸化とは賞味期間が過ぎたことを言いますが、経時変化期間は、焙煎後、酸化するまでの間のことと、私は定義付けています。日々変化する香味を楽しむ事は、コーヒーの魅力の一つです。
賞味期間内であれば、豆によって、どんな豆が?どんな風に経時変化するのか?変化の早い豆とゆっくりな豆など、それらの違いを理解すると、コーヒーの世界がまた一段と広がります。
とても難しいとお考えでしょうが、豆による経時変化を、それぞれの使用頻度、ライフスタイルなどに合わせて、1週間、2週間、3週間と週単位で区別して考えると、香味の違い、保存の期間、仕方が把握しやすいでしょう。
④焙煎したての豆
・・・・・※アロマ(カップからの香り)、フレーバー(飲んだ後に鼻に抜けていく香り)、熟成(豆の香味のピーク)
焙煎直後は、新鮮で香味が一番良いと思っている人が多いようですが、実は、焙煎したての豆は、アロマの香りは薄く、フレーバーの香りが軽く少なく、味はコクが少なく、甘味やその他の深い味わいが抜けているような感じになります。実は、抜けているのではなくて、まだ出来あがっていないのです。また、炭酸ガスがどんどん発生するため、抽出も豆が膨らみすぎてなかなか上手く淹れる事が出来ません。熱により収縮した脂肪やカフェオールは1~2日、時間を置くことによって、脂肪が開き(膨張?)、ようやく香味が上がってくるのです。
⑤焙煎してから1週間前後の豆
焙煎後、1週間くらいまでの豆は、ガスも適当に抜け、アロマはフレッシュ香が豊かに香ります。フレーバーは豆によっても違いますが、ほんのり舌に残る傾向にあるようです。味は、フレッシュでフルーティーな酸味、適度な苦味とコク、軽やかな甘味と口当たりのコーヒーになる傾向にあります。熟成にはまだ若干早いように思いますが、ブラックで香りを楽しみたいのなら、この時期のコーヒーを飲むと良いでしょう。
⑥焙煎してから2週間前後の豆
焙煎後、2週間くらいまでの豆は、余分な炭酸ガスが抜けていますので、アロマは落ち着き、本来の香りが漂います。フレーバーは深みを増し、アフターフレーバー(残り香)が強くなる傾向になるようです。味は、フレッシュな酸味が適当に少なくなり、コクが増し、苦味と甘味のバランスがよく、苦味の後に、ほんのりと残る甘味の余韻が楽しめます。
豆によっては熟成を迎えますが、脂肪の豊かな豆はもう少しだけ熟成期間が必要です。
⑦焙煎してから3週間前後の豆
焙煎後、3週間くらいまでの豆は、豆によってはアロマが少し薄くなる傾向にあります。フレーバーはフレッシュな物とは違う、熟成(酸化?)した香りがかすかに感じられるようになります。味は、コクと深みが増し、まろやかで柔らかな味になり、雑味と間違えるような、舌に絡みつく複雑な味わいになる(アフターテイスト)。豆によって1週目とは、かなり違った香味になる。脂肪の豊かな豆はこのくらいの時期で熟成のピークを迎えます。脂肪が少なく経時変化の激しい豆は、そろそろ賞味期間を過ぎ、「スッパ味」が出始めます。
⑧焙煎後3週間を超えた豆
酸化した香味。アロマはツーンとした鼻を突く香りになり、フレーバーも鼻に突く香りが出てきます。
味は、深煎りの豆は、雑味が多く舌に残る嫌な苦味が出てきます。浅煎りの豆はいつまでも舌に残る、酢のようなスッパ味が出てきます。賞味期間が過ぎ、熟成から酸化となります。
⑨経時変化の遅い豆
水洗い式(ウォッシュド)の豆、非水洗い式(アン・ウォッシュド)の豆に関係なく、栽培地の高度が高く(大体1400m以上)で土地が肥沃で、気候が適している所で収穫される、脂肪の豊かな豆は、経時変化が少なく焙煎後、あまり早い時期に飲むと、まだ本来の香味が醸し出されません。2週間過ぎくらいから滑らかなコクが出て、香味のバランスが良くなってきます。一般的に、スペシャルティコーヒー、プレミアムコーヒーなどの豆はこういった豆が多いです。
また、焙煎濃度が深すぎる(フレンチ、イタリアンロースト)豆は、賞味期間が他の焙煎濃度の豆より短いですのでご注意ください。
◎コロンビア、グウァテマラ、エルサルバトルなど中南米の高地産の豆、ケニア、タンザニア、エチオピア・モカ、イエメン・モカなど・・。
⑩経時変化の速い豆
経時変化の遅い豆とは対照に、比較的高度の低い豆はおおむね熟成を早く迎えます。
一般的にスタンダード、コマーシャルコーヒーなどの豆ですが、スペシャリティの中でも比較的高度の低い地域で収穫された豆も経時変化が早いです。
◎スタンダードコーヒー、コマーシャルコーヒー、パプアニューギニア、ハワイ、マンデリン、ブラジル、ペルーなどの、特に標高の低い産地で収穫される豆
⑩豆の保存
a.コーヒー保存缶やビンはあまり向かない
b.真空パックは、開封のたびに、再度、真空出来れば賞味期間が延びる。
c.開封のたびに、余分な空気を抜ける専用のジッパー式袋での常温保存は、適応に経時変化を楽しむ事が出来ます。
d.冷蔵庫の保存は、常温より多少賞味期間が延びるので、熟成期間も適時に対応する事が大切です。また、コーヒーは他の臭いを吸い取る作用があるので、専用のジッパー式袋で他の食品の香りがつかないようにしっかり封をして使用して、冷蔵庫から豆を取り出したら、保存袋はしっかり封をして、すぐしまって下さい。缶やビンなど、空気の部分が出来る容器は向きません。
e.冷凍保存は、賞味期間という面においては一番期間が長いです。注意点は冷蔵保存と同じです。粉に挽いた場合や豆でも使用するのに一ヶ月以上かかる場合は、この保存方法が良いでしょう。
f.本来は少量購入がベスト
【総評】
コーヒーは焙煎後、一定期間を超えると「酸化」となり体に負担のかかるコーヒーとなりますのでご注意ください。残念ながら、コーヒーの酸化を止める保存方法はありません。賞味期間が過ぎたコーヒーは見た目には何の変化もありませんし、スーパーや大手コーヒーメーカーが真空パック、窒素注入法などで賞味期間を6ヶ月以上などとしているために、一般の方々はカビなどで腐らない限り、飲めるような錯覚を起こします。これらの酸化したコーヒーが、日本人でよく言われる「コーヒーを飲むと胃が悪くなる」です。
確かに、酸化したコ-ヒーは、過酸化脂質が出て胃に負担になるコーヒーになります。新鮮なコーヒーは胃に負担はありません。コーヒーの賞味期間は焙煎後約25日程度あります。新鮮過ぎれば良いというのではなく、それぞれの豆による経時変化の香味の違いを楽しんで頂きたいのです。経時変化の熟成期間を把握すると、豆の香味のピークがわかり、豆の特徴を楽しむができます。
いずれにしても、繰り返し繰り返しコーヒーを淹れて、一粒一粒、一滴一滴、一味一味を確かめながら飲むことで、味覚が習練されコーヒーの香味が理解できる(カッピング力)ようになります。
