コーヒー・ドリップポットの正しい選び方 コーヒー・ドリップポットの正しい選び方
コーヒー・ドリップポットの正しい選び方

コーヒー・ドリップポットの正しい選び方

更新日:2020年10月5日
こんもり

いつもありがとうございます。
GO TO EAT、GO TO TRAVELキャンペーンが始まりました。日本ではだんだんと元の生活に戻りつつありますが、まだまだ油断できませんね。また、世界ではコロナの感染が止まりません、9月下旬には一週間で200万人が感染したともいわれています。今はグローバルの時代ですので、世界がこの先どうなってしまうのか心配です。これからどのように生活をしていくのか、少しでも何らかの確かな形が見えないと、動くにも耐えるにしてもどうしていいのかわかりませんので不安な毎日です。特にテナントの店、従業員を多く雇っている店などは、耐えているうちにも賃料等を支払わなければなりませんので、本当に大変です。

しかし、こんなことばかり言っていても始まりませんので、この機会に商品開発やいろいろな技術を磨く時間をたくさん持ち、回復した時にはより良い店になっている準備期間としたいものですね。とにかく不安な毎日ですが、気力をなくさないことが肝心です!皆さんもこの自粛期間によって多くのストレスを抱えていることと思います。朝、15分だけ早起きして、コーヒーをゆっくり楽しむコーヒータイムを持ってみてはいかがでしょうか?朝、一杯のコーヒーをゆっくり楽しむと、体がシャキッとして、心にもゆとりができ、一日のリズムが良くなりますよ。コーヒーを淹れることはとても簡単ですので、是非、自宅でコーヒーを淹れて飲んでください。

コーヒーの抽出法には、ドリップ式(透過法)とボイルド式(浸漬法)の2種類があります。それぞれに様々な器具があり、同じ豆を使っても全く違った味わいのコーヒーになります。しかし、以前から申しあげているように、日本人が好む、雑味がなくクリーンなブラックで飲んでも美味しいコーヒーが淹れられる器具は、なんといってもペーパー式かネル式のハンドドリップ法です。当店の珈琲教室(今は休講中)はハンドドリップ法を推奨しています。毎回、生徒全員が同じコーヒー豆を同じ量を使って、湯温などすべての条件を同じにしてドリップで淹れます。

しかし、なぜか全員味が違うのです。それがドリップの難しさでもあるのですが、面白さでもあるのです。では、何が違うのかというと、なんといっても一番の違いは「お湯の差し方」です。お湯の差し方によって香味が全く違ってしまうのです。

お湯の差し方は、味わいたいコーヒー(豆や焙煎濃度、エキス濃度など)や湯温によっても違いますので、こう差せばよいということは一つではありません。「抽出10万杯で一家言を成す」。私は珈琲屋を始めた頃、こう言われました。店を開業して43年、今までに100万杯以上淹れていますが、その日、その時、その豆、飲む人によって違いますので、本当に難しい世界です。

ドリップ法はお湯の差し方がとても重要なのです。基本は、お湯を細く(すべてではありませんが・・)静かにゆっくりと注ぎ入れ、雑味(灰汁)を出さずに旨味成分だけを抽出するのがポイントです。先ずは基本となる理論、技術を習得して繰り返し淹れることが肝心です!良いドリップをするためには、良い器具をそろえることが必要です。「弘法筆を選ばず」という言葉がありますが、コーヒーの器具に関しては、まずは良いものを選んでください。

コーヒーのドリップには、お湯を差す専用の「ドリップポット」があります。今はいろいろなメーカーから様々なドリップポットが販売されています。値段の高いものから安いもの、大きなものや小さなもの、口の形状が違うもの、ホーロー、ステンレスなど素材の違うものなどさまざまで、どれが良いのか選ぶのに大変です。

ではどんなドリップポットが良いのでしょうか?今回は良いドリップポットの選び方を説明しますので、参考にしてください。

赤

カリタ ペリカンドリップポット(ホーロー)

①《ドリップポットとは?》

ハンドドリップの最大の魅力は、灰汁(アク)をエキスに混入させないクリアな味を作り易いという事です。1湯目は万遍なく粉にお湯を注ぎ入れ蒸らしをします。2湯目からはドリッパー内のお湯を切らすことなく注ぎ入れ、泡(アク)をサーバーに落とさないように注意して最後まで注ぎます。湯を注いだ時に出る泡(炭酸ガス)は鮮度の証明です。新鮮なコーヒーは炭酸ガスが含まれていて、湯を注ぐと泡となって灰汁(アク)を上部に浮かせ、エキスに灰汁を混入するのを防ぐ役割がありますので、雑味の無いクリアなエキスになります。

古いコーヒーは炭酸ガスが抜けていますので泡が出ず、お湯を注いでも灰汁が上に浮かずにエキスに混入してしまいますので、雑味のある舌離れの悪いエキスになります。新鮮なコーヒーは健康に良いだけではなく、抽出にも影響してくるということがわかっていただけると思います。

ここで、灰汁を上部に残しながら旨味成分だけを抽出することで、とても需要なのが「ドリップポット」です。
【解説】 Drip=したたる、液体をポタポタ落とす

ドリップポットとは、コーヒーをドリップ(透過)抽出する時に使用するやかんです。ドリップ専用ですのでお湯を沸かすのには適しません。よって、ドリップポットはコーヒーを淹れる専用にして、湯を沸かすポットとは分けると良いでしょう。

②《ドリップ式抽出法の条件》

【解説】 抽出とは悪い味を出さず良い味と香りを最大限に引き出す事である!?(酸、甘、苦、コク、香、渋)

a. 良質で新鮮なコーヒー豆(焙煎濃度、産地、ブレンド等・・)
b. コーヒーに適した水(カルキを除去した新鮮な水)
c. 良いドリップをするために必要な道具と器具(ドリップ専用ポット、温水計、タイマー、スケール、ドリッパー、サーバー、フィルターなど)

③《ドリップポットの役割》

ドリップコーヒーの淹れ方はすでに何度も書きましたが、基本の通り淹れるにはドリップポットはとても重要な条件の一つです。コーヒー抽出を「淹れる」と言いますが、それは、コーヒーのエキスを引き出すと言う意味で、抽出全般の事を意味しているようです。ドリップ抽出は他の抽出器とは違い、お湯(水)を上からコーヒーの粉に透過させてエキスを引き出します。

この抽出の時にお湯(水)をドリッパー内に落とす事を「点てる」と言います。書いて字の如し・・ドリップ抽出の基本は、湯を一滴一滴、一点て一点てしていくのです。
また、私たち珈琲屋はお湯を「差す」とも言います。

【参考資料】「差す」という意味は・・1 ごく少量の液体をある部分に入れる。「目薬を―・す」「ギヤに油を―・す」 2 液体をほかの液体や容器の中へ少し、または少しずつ加え入れる

ドリップコーヒーのお湯の差し方は、コーヒー粉の上からお湯(水)を差して、お湯の重力だけで旨味成分を抽出する方法です。このときに、高い所からお湯を注いだり、細すぎる口のポットなど過度の圧力をかける注ぎ方は、ドリッパーの中でお湯が動きすぎ、上下対流をおこしてしまいますので雑味成分が混入されやすく、ドリップコーヒー最大のポイントである、「良いエキスだけを安定して抽出する」ことが難しくなります。

④ 《ドリップポットの選び方(ポット選びの注意点)》

a. 大きさとバランス
大きすぎると扱うのに力が必要になるため、細かいコントロールが難しく、湯の勢いも強くなります。 小さすぎると何度も湯を継ぎ足さねばならなくなりますから、お湯を差すのが途中で切れたり、お湯の温度が変わりやすくなります。また、重すぎる物や、軽すぎる物もうまく差すことが難しいと思います。結果としては、扱いやすく、日頃よく淹れる杯数などを考慮して大きさを決めましょう。

購入の際は、できれば実際にお湯(水)を入れて差してみるのが一番です。把手の部分を持って軽く提げてみたときの全体のバランス、お湯の流れ方を試してください。ドリップするときに余分な力がいらず、お湯が垂直に落ち、水量が意のままにコントロールできるような注ぎ口、湯量が減っても、安定したお湯が最後まで差せるポットを選ぶと良いでしょう。

b. 口の細さ
ドリップポットとして売られているものの特長は注ぎ口の細さです。同じサイズのポットと比べてみると少なくとも一回りは細くなっています。 口が細いということは、一度に出てくる湯の量が少なくなることに繋がります。ドリップの場合、できるだけお湯を静かに差せることが重要ですから、そのことから言っても「口の細いものを選ぶ」ことは非常に重要なポイントになります。

ただし、本体から均一に細い径のポットは少人数(1~2人)専用です。このポットで多人数(3人前以上)を淹れると、ポットを強く傾けて湯を多く出さなければならず、結果、水圧が上がり、ドリッパーの中で粉が上下対流してしまうので雑味が出やすく、クリアなエキスを抽出するのが難しくなります。

c. 口の形
口の細さと並んで大切なことに、注ぎ口の形があります。

カリタのペリカンドリップポットは「鶴首のポット」で、圧力が変わらずに湯が細くも太くも注げるように作られています。いろいろな人数のコーヒーを淹れる人には、元が太めで先に行くほど細めになっている口のものがオールマイティーに使用できるので良いでしょう。

今はとても多くの商品が発売されている、ポット本体の元のところから口まで均等に細いホースのような形のポットは、一人前には向いていますが、2人前以上を差そうと思うと圧力がかかり過ぎ、ドリッパーの中で粉が踊ってしまい、透過法の良さが失われます。

d. 位置
注ぎ口が高い位置にあるポットは、ドリッパー内のコーヒーの粉に近付けた場合、ポット自体の角度が保たれ、お湯が少なくなっても安定した差し方ができます。逆に、注ぎ口が低いと、ドリッパー内の粉に近付けるのに、ポット自身をかなり傾けなければならず、おのずと高い位置から注がざるを得なくなり、結果として湯の勢いが強くなり、圧力がかかり過ぎ、良いエキスを抽出する事が難しくなります。 注ぎ口の位置が高いものを選ぶだけでも随分注ぎやすくなります。

銀

Miyacoffee ドリップケトル0.9L(ステンレス)

e.お湯がねじれないポット
ドリップポットは注ぎ口の形状が細いお湯が出るように工夫されています。但し、ここで一番大切なことはお湯の出方です。ポットから出るお湯は、真下に柔らかく落ちるように出ることが大切です。また、そのお湯がねじれていないことがとても重要です。ねじれたお湯は、注いだ時にドリッパーの中の粉が動きすぎるので、エキスは多く出るようですが、それに伴い雑味(灰汁)も多くが出てしまいます。プロの方でも気が付いてない方が多いようですが、ほとんどのポットはねじれて出てくるものが多く、まっすぐ真下に出てくるポットは意外と少ないのです。
また、お湯を注ぎ続けてポットの湯の残量が減っても、お湯が最後まで均一に出続けるポットも重要な要素です。

今、この条件に合うポットは、カリタのペリカンドリップポット(ホーロー)か燕市のメーカー「宮崎製作所」の「Miyacoffee ドリップケトル0.9L(ステンレス)」ですが、それぞれ適性があります。

1~2人を淹れるのには、Miyacoffeeドリップケトルが良いと思います。
3人以上を淹れるには、カリタのペリカンドリップポットが良いと思います。

お湯3

お湯がねじれずに、垂直に落ちるドリップポット

ねじれ

お湯がねじれて出てくるドリップポット

⑤《ドリップポットの差し方》

ドリップポットの注ぎ方の注意点を、私が推奨する、カリタのペリカンドリップポットを使い説明しましょう。

このドリップポットは、銀座の「カフェ・ドゥ・ランブル」の関口一郎氏が開発して、それをカリタが模写して、市販品として販売しているポットです。とても優秀なポットで1人前から5人前くらいまで安定して差す事ができます。

差し方としては、ちょうどお湯がでるかでないかのバランスのとれたところに人差し指と中指と薬指をおきます。あとの二本の指はそえるだけです(力を入れない)。もともと、バランスの良いポットですので少し傾けるだけで、あまり力がいらず、垂直にお湯が落ちます。

重さを感じながら、中指を支点に薬指を少し持ち上げ、人差し指の力を抜くと、お湯がゆっくりと垂直に安定して落ち続けます。あとはドリッパーの中心から外へ同じ量のお湯を静かに差します。そのときに、ポットの口の高さをキープ(上下させない)することがポイントです。コツとしては、手首を固定してひじをまわすようにすると安定した差し方ができるように思います。

【総評】

ドリップポットの歴史は、1800年頃、フランスのドゥ・ベロワというパリの大司教がドリップポットを設計し、「コーヒーの粉を濾して飲む」というスタイルを普及させたときから始まりました。しかし、このドリップはお湯を差すためのポットではなく、コーヒーを淹れる道具としてのポットでした。

お湯を差すポットは、ドリップコーヒー主力の日本のコーヒーから始まったのです。ドリップポットの歴史は、ドリップコーヒーの歴史といっても過言ではありません。実際、私の43年の珈琲屋人生もドリップポットの改良、研究の日々でした。一生物の良いドリップポットに出会っていただきたいと思います。

皆さんも同じコーヒー豆を同じ条件で淹れ比べた時、お湯の差し方によって味がまったく違うと・・・感じたことはありますね。ドリップコーヒーにおいて、お湯の差し方は香味に大きな影響を与えます。常に同じ味を出すには、少し経験が要りますが、お湯の差し方によって味がどのように変化するかを習得すると、自分の好みのコーヒーを創ることができ、コーヒーの世界が一段と広がります。

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