いつもありがとうございます。
今回は日本の喫茶店文化の変遷をお話しいたします。
世界には砂糖や香辛料など様々な嗜好品がありますが、世界3大趣向品というと、コーヒー、酒、タバコです。嗜好品ですので、違った味や香りの物をそれぞれ各人が好みのものを「おいしい」といって楽しんでいるのです。よって「おいしい」とは全く個人的な嗜好ですので、コーヒーも自分が美味しいと思うものをいろいろな形で楽しんで下さい。
日本では喫茶店もいろいろ形態の店があり、それぞれ時代によって形を変えてきました。前回まで世界のカフェの歴史をお話してきましたが、今回は日本の喫茶店の形跡を知っていただこうと思います。
喫茶店とは本来「お茶を飲む店」という意味で、喫茶の「喫」は、口からのどを通して腹の中へと入れる。くう。くらう。たべる。のむ。身に受けるなどの意味で、「お茶を飲む店」ということになります。喫茶の「喫」を喫煙の「喫」という意味と勘違いしていて、お茶を飲みながら喫煙するのが喫茶と考えている方が多くいました。
確かに歴史からみると、昔からコーヒーとタバコはワンセットで楽しまれてきました。アラブ世界では未だに水タバコを吸いながらコーヒーを飲むのが定番ですし、日本でも10年前くらいまではタバコが吸えない喫茶店はほとんどありませんでした。
しかし、昨今、喫煙をする方が少なくなりましたので禁煙や分煙をする喫茶店が多くなりました。また、今年の4月からは「受動喫煙防止条例」が施行されますので、ほとんどの喫茶店でタバコが気軽に吸えなくなります。
当店はそれに先駆けて昨年4月から全室禁煙としましたので、今はたばこの煙や匂い等がなく、とても空気の澄んだ空間で多くのお客さんにコーヒーを楽しんで頂いています。
日本における喫茶の歴史概要
日本最初の喫茶店「珈琲茶館」記念碑
(「~」はその後という意味で使用)
日本における喫茶店の始まりは茶の湯から発展しました。
平安時代に中国から茶が入る
~鎌倉時代には茶の効用を書いた「喫茶養生記」がすでにあった
~寄り合い茶屋(町人と侍)
~茶道(礼儀と作法のセレモニー)
~茶の湯
~茶屋
~江戸時代には浮世絵に描かれている「美人喫茶」が出現
明治
~文明開化と共にコーヒーやミルクが飲まれ出す
~1888年 鄭永慶(セイエイケイ)が日本で最初の喫茶店「可否茶館」開店、四年後閉店
~ミルクホール
~女給
~カフェー(キャバレー)
大正~昭和初期
~パウリスタ、プランタン、ライオンなどが次々に開店
~「カフェ・パウリスタ」によりブラジルコーヒーが普及
~第二大戦中はコーヒーの輸入がストップ
~大豆、チコリ、タンポポの根、サツマイモなどで代用コーヒーが現る
~ダメージコーヒー(コーヒー62%チコリ10%サツマイモ28%)などと呼ばれていた
戦後
~家庭ではお茶と紅茶が飲まれる
~家庭でインスタント(ソリュブル)コーヒーが普及
~レギュラーコーヒーは喫茶店(ヤグラ、コーヒーアーン)で・・
~大阪万博でUCCが缶コーヒーを発売
~コーヒーの多様化
~喫茶店の多様化
~サロン、クラブ的要素
~‘70年代から’80年初めに掛けて喫茶店盛況時代
~家庭でもレギュラーコーヒー(布フィルター、パーコレーター、サイフォン、ペーパードリップ、コーヒーメーカー)が飲まれるようになる
~ファーストフードや大手コーヒーチェーンの出店
~コーヒー消費量世界第三位に急伸
~核家族化(長屋文化の崩壊)
~喫茶店の衰退
~サロン的喫茶の終焉
~量はチェーン店とコンビエンスストア
~質は自家焙煎珈琲専門店
喫茶の歴史を調べていくと日本の歴史が見えてきます。
①【‘60年代から’70年代に流行した喫茶店】
◎地の利(地域格差がなくなった)、人の利(団塊の世代など人口増加)、時の利(戦後の経済成長)によって喫茶店が流行した。
【当時の喫茶店】
※ 当時、喫茶店には冷暖房が完備されていて、暑さ寒さをしのぐ一時の休憩所として利用された。
洋酒喫茶(コーヒーやソフトドリンク以外に酒類も提供する店)
和風喫茶(抹茶と和菓子、茶房、茶寮など)
純喫茶(ドリンクのみを提供する店)
軽食喫茶(軽食スナックなども提供する店)
社交喫茶(社交ダンスなどができる店)
歌声喫茶(今でいう唄える店・・みんなで歌うカラオケ?)
名曲喫茶(正面にスピーカーがあり、一方方向に席があり照明を落としてクラシックなどを静かに聴いてくつろぐ店)
音楽喫茶(JBL,アルテックなど家庭では買えない高級オーディオでレコードをかけ楽しむ店)
ジャズ喫茶(ジャズ専門の店)
ギャラリー喫茶(店内の壁を使って絵画などを飾り、ギャラリーを併設した店)
珈琲専門店(世界のいろいろなストレートコーヒーを専門に提供する店)
カフェバー(バー的な要素を持った喫茶店、若者も利用できる明るいバー)
ノーパン喫茶(チラリズム)・・大阪アベノのスキャンダル
・・・などなど
小規模のクラブ的な要素やサロン的な喫茶店がほとんどでした。現代は大型店舗の席が隔離されているファミリーレストラン、ファーストフード、チェーン店やマンガ喫茶、インターネット・カフェなどの、店員や他人とほとんど交流しないスタイルの店が流行しています。
②【‘60年代から’70年代に喫茶店で流行したコーヒー以外のメニュー
コーラ
ミックスジュース
ミルクシェイク
トマトジュース
レモンスカッシュ(ポッカレモン?)
フルーツパフェ
チョコサンデー
プリンアラモード
イタリアンスパゲティー
ナポリタン
小倉トースト
モーニング・・・・などなど
➂【‘60年代から’70年代喫茶店の備品いろいろ】
厚手のコーヒーカップ
ステンレス製のミルクピッチャー
平凡パンチ、プレイボーイ、競馬新聞などの雑誌等
店の広告マッチ(マッチの収集)
ジュークボックス(※学生街の喫茶店)
高級オーディオ(高価すぎて個人では所有できなかった)・・・などなど
④【‘60年代から’70年代に流行したコーヒー】
《レギュラーコーヒー》・・角砂糖とミルクをたっぷり入れて飲むスタイルとマニア向けのブラック・コーヒー。
ブレンドコーヒー(格店が工夫を凝らしたその店の特徴を現したコーヒー)
ブルーマウンテン(高級コーヒーの代名詞ともなったバランスの良いコーヒー)
モカ(コーヒールンバの歌に出て来るように、独特な香味は多くの方に愛された。ミルクとの相性も良い)
コロンビア(当時は原種のティピカ種で高級マイルドコーヒーとしてブラックで楽しむことができた)
マンデリン(独特のテロワールが多くのコーヒーマニアから支持を得た)
キリマンジェロ・・・などなどのストレートコーヒー
《インスタント(ソリュブル)コーヒー》・・家庭ではほとんどの方がインスタントを飲んでいた。
※ 家庭で飲まれたインスタントコーヒー(ネスカフェ、ゴールドブレンド、ユーバン、ブレンディ)
家庭で使用されたコーヒー専用の粉ミルク(クリープ、ニド・・・)
《缶コーヒー》・・大阪万博で初めてUCCが発売し、自動販売機の拡大と共に日本中に広まった。
《アイスコーヒー》・・・80年代になると、チコリなどの混ぜ物コーヒーから100%コーヒーに変わった。
《バリエーションコーヒー》・・コーヒーメニューの多様化、チョコなどを使ったお菓子的要素のコーヒー。
その後、ケーキ時代到来によりコーヒーとケーキのセットメニューは定番となった(チーズケーキ、チョコレートケーキ、ショートケーキ)
その後、いろいろな飲み物の専門店時代の到来(自家焙煎珈琲専門店、紅茶専門店など)
今、日本ではいろいろな形態のカフェでコーヒーが飲まれています。それぞれの時代にはいろいろな「波(流行)」がありました。
第1の波:ファーストウェーブ
1950年代から1970年代まで続く、喫茶店全盛期、大量生産・大量消費の始まり。経済発展や流通の発達により、多くの方が喫茶店でコーヒーを愉しむようになった。ハイカラな飲み物からポピュラーな飲み物になっていった。
第2の波:セカンドウェーブ
1980年代から、深煎り高品質の豆を使ったエスプレッソコーヒーやバリエーションコーヒーを中心に展開したシアトル系コーヒーチェーン店や日本の大手コーヒーチェーン店、ファーストフード店などの台頭でコーヒーが身近で手軽な飲み物になった。
第3の波:サードウェーブ
現在、日本でも流行しているサードウェーブのコーヒーの特徴は、おもてなしと香りを楽しむ(タバコを吸わない人が多くなった)コーヒーです。コーヒー豆の品質や抽出方法(ドリップ法)、鮮度、ローストにもこだわり、一杯一杯ハンドドリップで心を込めて淹れるコーヒーで、昔からある日本の「おもてなし文化」のスタイル。
そのサードウェーブを作り出した代表格でもあるアメリカのブルーボトルコーヒーは、10年ほど前に、日本の一杯一杯きちんとドリップする姿に感銘を受け、アメリカに帰り、一杯ずつ丁寧に淹れるペーパードリップスタイルをトレンド化し大流行させました。日本ではすでに40年以上も前から行っているスタイルですので、日本はアメリカより40年も先端を行っているといってもいいでしょう。
第4の波:フォースウェーブ
次に来るのは当然フォースウェーブですが、どんな波が来るかは今のところはっきりしていません。流れから予想をすると、健康コーヒーの時代の波がくることは間違いないと私は思っています。その一つとしてカフェイン抜きの「デカフェ」が流行すると考えています。
現代のカフェイン飲料過剰摂取においてカフェインの摂りすぎは健康を害すると危惧されています。また、時代の波の流れから考えると、やはりおいしさだけではなく高品質で体に良い「健康コーヒー」がだんだん重要視されてくるように思います。それも、簡単、便利で香り高い美味しい健康コーヒーを手軽にお安く。よって、飲みたい時に飲みたいものを自分で淹れて楽しめる「ホームコーヒーの時代」になるのではとも思っています。
コーヒールンバ」西田佐知子
【資料】《今買えるコーヒーにまつわる音楽CD》
CD 「一杯のコーヒーから」・・1939年(昭和14年)3月20日にコロムビアレコードから発売された流行歌。 解説[編集]. 作詞は藤浦洸で、作曲は服部良一。歌は霧島昇とミス・コロムビア。 作詞した藤浦洸は、お酒が飲めないコーヒー党であった .
CD 「コーヒールンバ」・・「コーヒールンバ」(Coffee rumba)は、アルパ奏者のウーゴ・ブランコ(スペイン語版)の演奏で世界的にヒットした曲。原曲は、ブランコの叔父であるベネズエラの作曲家ホセ・マンソ・ペローニ(Jose Manzo Perroni)がコーヒーをモチーフに1958年に作詞・作曲したMoliendo café(モリエンド・カフェ、日本語対訳「コーヒーを挽きながら」)である。
日本では1961年から1962年に西田佐知子(日本語詞:中沢清二)、また西田盤と歌詞は異なるが、ザ・ピーナッツらによりカバー版が競作されるが、中沢清二によるエキゾチック趣味の日本語詞(原曲の詞とは全く無関係)で唄った西田佐知子の歌唱版がより知られている。他に、荻野目洋子、井上揚水も唄っている。
CD 「学生街の喫茶店」 ガロ
CD 「コーヒーカンタータ」 バッハ
CD 「シバの女王」(イエメン・シバ王国の女王の曲)
