いつもありがとうございます。桜の咲くのが今年は早いですね。というより月日の経つのは早く、もう4月になりましたね。この時期は新しい世界にスタートを切る方が多く、何かとフレッシュで活気があるように感じます。
当店も、新たに4名の学生アルバイターが入りまして、新鮮な顔ぶれとなりました。
当店の仕事は、ホールの仕事や豆売り、サンドウィッチなどの調理まで、珈琲を淹れる以外店の仕事すべてを覚えていただきますので、全部の仕事ができるようになるまでに最低でも1年はかかります。大変な作業ですが継続してじっくりと育ってくれると嬉しいです。
この仕事は、ホールなどのフットワークを使う「ハードワーク」と、思いを言葉にする(お迎えやお見送りのあいさつなど)「ソフトワーク」がありますが、その両面をこなさなければなりません。
私が最初に教えるのは「ソフトワーク」です。特に挨拶においては妥協を許しません。挨拶は人と人の心を繋ぐための大切なコミュニケーションです。これができないと次にはいけませんし、この仕事をやる意味がないのです。気持ちを持って、気持ちを込めてお客と接するのです。すべてはそこからスタートするのです。いずれにしても接客業は人生の縮図のようなものだとつくづく感じます。
書家「川口茜漣」さん
さて当店には漆喰の壁面を使って、毎月いろいろな作家の方にギャラリーとして利用していただいています。写真やイラスト、絵画など様々な素晴らしい方に店を飾っていただいています。
今月は以前このブログでも紹介したことのある「川口茜漣作品展」を開催しています。茜漣さんは、とても品がありお美しい方ですので、タイトルを「美しすぎる書家展」ってつけようと思ったほどです(笑)中日文化センター栄教室の私の珈琲講座に6年以上も連続で通っていただいている生徒さんで、自分で珈琲の焙煎もされ、珈琲を淹れる腕前はまさにプロ並みです。
私は作品展を以前から当店でとお願いしていましたが、三重県津市の作家さんですので遠くてなかなか実現しませんでしたが、今回、ご主人さんの協力もあってようやく実現いたしました。素晴らしい作品の数々が多くのお客に喜んで頂いています。
≪川口茜漣 略歴≫
1960年 名古屋市に生まれる
1984年 土屋陽山に師事, 暢心書道会所属
1988年 毎日書道展出品(以後毎年出品)
1994年 毎日書道会会員
1998年 毎日書道会・暢心書道会退会
現在・無所属
三重・東京を中心に作品を発表
三重県津市在住
茜漣さんには今の店舗の入り口に飾る「珈琲訓」をお書き頂き、その縁から数点の作品を購入させていただき、南側の室に飾っています。
墨の持つ色は、一見、白黒のモノトーンのシンプルな画に感じますが、実は独特な無限の色合いがあります。中国の『筆法記』に「墨を用いて独り玄門を得」とあり、“玄”すなわち墨の黒は、真っ黒の一歩手前の色で、すべての色を含む万物の根源であり、ものの本質そのものをあらわすといわれています。世界には多くの色彩があるにも拘らず、墨の玄のなかにはすべてのあらゆる色を見いだすことが出来るので
す。その色の豊かさ深まりはすべてを表現できるのです。
一見モノトーンにみえる世界は、観る人によって多彩な色を感じます。それも全く違った色を感じるのです。
私がイエメンで手に入れた「琥珀」
1754年2月13日~1838年5月17日まで生きたフランス革命から、第一帝政、復古王政、七月王政までの政治家で外交官のタレーランの有名な言葉で、
「コーヒー、それは悪魔のように黒く、地獄のように熱く、天使のように純で、まるで恋のように甘い」
とあるように、昔から珈琲も黒の世界と思われている方が多くいます。
珈琲の色は「琥珀色」といわれるように、黒ではなく「少し黄色かかった赤色」、「くすんだ 赤 みの 黄 」なのです。良質で濃度の高い最高のコーヒーエキスは一見黒のように見えますが、実は琥珀のような澄んだ赤で、光によっては虹色に輝くほど多くの色を持っています。いかがですか?墨の色とどことなく似ていますよね。
※【琥珀とは?】琥珀は鉱物ではなく、長い年月をかけて木の樹脂が化石となったもので、光にかざすと赤や黄色に輝き昔から宝飾品として珍重されています。
間(あわい)
時のカタチ
茜漣さんの抽象作品は、伝統的な書から、独自の想像力に富む線的な抽象形態を発展させて無限の世界を表現しています。また、その作品に対峙した時に様々な思いと色彩が湧き出てきます。作品のタイトルもとても素敵で、書家の方の「言葉」に対する広くて深い思いが強く感じられます。
全ての人にお分かり頂ける作品ではありませんが、それでいいのです!いや、むしろそれがいいのです!それが「川口茜漣の世界」なのです!
物創りは、観る方に媚び寄り添っていくものではなく、優美な世界に引き上げる住人であり続けるべきなのです。私が尊敬すべき珈琲人も、常に妥協せず人に媚びず寄り添うことなく珈琲とだけ真摯に向き合った方々でした。私もそのような仕事を心がけていますが、これがなかなか大変で難しく未熟な自分をいつも戒めています。
音
茜漣さんは、抽象画以外にも「花」とか「音」などの言葉(文字ではない)も素敵に書かれます。今回は、私が抽象画好き!という事からかお持ちいただけませんでした。
当店は、初めて墨の作品展を開催しましたが、墨の世界がこんなにも漆喰壁に合うとは思いませんでした。まるでしつらえたようにぴったり部屋に同化しています。
私は、珈琲の焙煎と抽出を41年間本当に様々な事を試して模索してきました。今回、茜漣さんの作品を観てこれからの私の求めるスタイルがおぼろげながら見えてきました。なるべく余分な事は取っ払い、珈琲その物の本質である香味、その魅力をなるべく素直に媚びず伝えること。そして、その一杯の珈琲の中に、様々な味わい(色彩)を感じ感動していただけるような珈琲を創るのだと・・・・。そんな思いにさせてくれた茜漣さんに心より感謝申し上げます。
多くの方に観ていただくように5月過ぎまで開催していますので、是非一度ご覧くださいませ。
※ 尚、作品はお分けしていますので、ご希望の方はお気軽にお声をおかけください。
