ブラジル・ミナス州のコーヒーの実
明けましておめでとうございます!今年もおいしいコーヒーを楽しく飲みましょう!
前回は、コーヒーのルーツ「モカ・コーヒー」のお話をさせていただきました。
エチオピア原産のアラビカ種のコーヒーが、対岸の国、イエメンに植樹され、その地から飲用が始まり、その後、イエメン~エジプト~トルコ~EUへとコーヒーの飲用が広まっていきました。需要が増えると対岸の国エチオピアの豆を、イエメンに持ち込み、モカ港から輸出しました。
その後、EU列国が、自分の植民地にイエメンから持ち込んだコーヒーの苗木や種を植樹して、栽培がイエメン~インド~インドネシア~中南米~世界に広まったことは知っていただきましたか?
コーヒーはアジアから広まっていったのですね。
1999年、ブラジルのカルモ農園を訪れました
さて、コーヒーの栽培がいよいよブラジルに伝わると、黒人奴隷とテラロッシャという肥沃な土地とあいまって、安価なコーヒーが大量に出来るようになり世界の主流となりました。ブラジルは一時期、世界の85%くらいの生産量を誇っていました。プランテーションのコーヒーはモノカルチャーのコーヒーとして世界の消費を支えたのです。
しかし、安価で大量なコーヒーを安定的に供給するためには、アラビカ種の原種のコーヒーでは、味は良いが病害虫に弱く、生産性が悪いのです。
そこで、各国、各地で、味が良い「在来種(ティピカ種、ブルボン種など)」に代わり、安定的に量が収穫できる「ハイブリッド種(カツァイ種、カツーラ種など)」を発明し、化学肥料、農薬を使用したコーヒーに切り替えていきました。
今では、原種のコーヒーはほんの一握りとなってしまいました。
質より価格、量の時代になったのです・・なってしまったのです。
コーヒーの飲用、栽培が世界中に広まり大量生産、大量消費の時代が到来すると、生産国と消費国の経済格差が顕著になり、それを解消し、価格や供給の安定を図る目的で、1963年に「国際コーヒー機関(ICO)」が設立されました。
しかし、列国の影響により、1994年、わずか30年足らずで「輸出割当制度」の条項が削除されてしまいました。
すると、コーヒーの国際相場は下がり、その結果、生産国の農園の経営は再び苦しくなり、経費節減のために、益々、ハイブリッド種に切り替えたり、安価な化学肥料、農薬、機械を使用する必要にせまられました。
今私たちが飲んでいるコーヒーは、30年前のコーヒーに比べると、全体の質は向上しているかもしれませんが、残念ながら、味は悪くなってるように思います。
それと並行して、「本当に良いコーヒーを提供しよう」というコンセプトで、1982年アメリカのコーヒー関係者が集まって、アメリカスペシャルティコーヒー協会設立(SCAA)が設立されました。
現在、この活動は世界に広まり国際的な機関となりました。
日本でもSCJA(日本スペシャルティ教会)として活発な活動をしています。
スペシャルティコーヒーは、それまでの、生産国の欠点豆の有無をチェックするネガティブ評価基準から、「おいしさ」という観点を、ワインの世界と同じように、味のキャラクターをポジティブ評価で、カッパー(味の試験官)が厳選なカッピングを点数評価で行ない、消費者にわかり易いようにしました。
カッパーとカッピングテーブル
また、農園がしっかりと管理・生産した美味しいコーヒーを、コーヒーの国際指標価格となっているNY相場とは関係なく、コーヒーを直接高値で買い付ける手法を取りました。
「美味しいコーヒーであれば、価格が割高でも売れる!」
生産者、消費者、買い付け業者の意識を変えたのです。
これによって、良いコーヒーを作れば高く売れるシステムができ、農園がそれなりの対価を得られるようになりました。
生産者は経済的にも精神的にも豊かになり、サスティナブル(継続可能)に良いコーヒーが安定して生産できるようになってきたのです。
近年、良く耳にする「スペシャルティコーヒー」は、良質で個性的なキャラクターを持った素晴らしいコーヒーが多いです。しかし、それがすべてという事ではありませんので、その点だけはお間違えの無いように・・・。
量の時代に、スペシャルティコーヒーは質の再認識を呼びかけています。時代に一石を投じたスペシャルティ協会は、「量の時代に歯止めがかかった」と言っていますが・・・・??
その対極にある、コンビニ・コーヒーやインスタント、缶コーヒーなどの安価なコーヒーが消費を伸ばしている事実は無視できませんし、スペシャルティコーヒーの占める割合は、まだまだ全体の1%くらいにしかすぎませんのですから・・・。
私は、世界のコーヒーは二極化の道に歩みだしたと思っています。
あなたはどちらのコーヒーを選びますか?
